藍井エイル「アトック」「金魚草」「僕が死のうと思ったのは」:言葉が綴る音楽世界、浮いては沈み、音を残す

fujiokashinya
Aug 16, 2021

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Eir Aoi

藍井エイルがシングル「アトック」をリリースしました。前月に配信されていた表題曲のほか、「金魚草」と「僕が死のうと思ったのは」という曲を収録したシングルです。

「アトック」では、暗く重い言葉のなかにも前を向こうとして苦闘する様子が描かれています。配信後に公開されたインタビューで、エイルは「音楽活動を始めたときから『どんな暗闇の中にあっても希望を持って歩き続けていく』ということをテーマにしているし、そうすればうまくいくことも身を持って知っている」と語りました。その「暗闇」の部分が、「アトック」では強く表出したのかもしれません。過去の曲を聴きなおしてみれば、通奏低音のようにエイルの活動を貫くそのテーマを感じられそうです。

ネガティブな言葉で重い印象が残るこのシングルのなかで、比較的ポジティブな表情を感じる曲が「金魚草」です。♪あなたは決して一人じゃないんだよ♪ と歌う声は切なさを含みながらも、力強く響きます。目の前にいる人に向けてエールを送り、その背中を押す歌声です。

「金魚草」のアレンジに既視感を抱きます。音の記憶をたどりたどって、到達したのはオルタナです。オルタナといってもいろいろあり、音楽的な定義がはっきりしているわけではないのですが、存在感の大きいボーカルと、歌うように咆哮するギターから僕は初期のParamoreをイメージしました。

三曲目に収録されている曲は中島美嘉「僕が死のうと思ったのは」のカバーです。曲名を筆頭に、「アトック」よりも直接的で、生々しい言葉が並びます。最初は歌詞に引きずられて、陰鬱で救いのない曲に思えましたが、エイルの歌声のおかげか、そこまで沈むことはありませんでした。

終盤になると、♪あなたのような人が生まれた 世界を少し好きになったよ♪ という言葉が曲への印象を刷新します。続く ♪あなたのような人が生きてる 世界に少し期待するよ♪ という言葉で音は解き放たれ、叙情的に響くピアノやギターの音が心に残ります。

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