藍井エイル「UNLIMITED」:美声は厚みを増して、折り重なった音の中で輝く

fujiokashinya
3 min readMar 21, 2019

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Eir Aoi

藍井エイルのオリジナル・アルバム『FRAGMENT』が2019年4月17日にリリースされます。リリース1ヶ月前に収録曲がアナウンスされ、その中から先行して「UNLIMITED」の配信(ダウンロード)が始まりました。同時に、ミュージック・ビデオがYouTubeで公開されています。

イントロからフルスロットルで疾走する音。耳を通して全身に行き渡るその快感は、スネアとギターの相乗によって生み出されています。また、随所に埋め込まれたエレクトロニック・サウンドもスピード感を高めるのに一役買っています。エレクトロ成分の多寡はあれど、前作「アイリス」に収録されていた「Daylight」に通じるのではないでしょうか。

歌声は疾駆する音に乗り、力強くまっすぐに響きます。特に好きなのがサビで音を伸ばすところです。最初に「UNLIMITED」を聴いたとき、サビに入った瞬間に、これまでとは少し違う空気を感じました。生来の美しさと繊細さは変わらず、厚みがさらに増したという感じでしょうか。多層的な音の中でも強烈な光を放つ歌声です。

デビュー盤よりも2枚目、それよりも3枚目、活動休止前よりも再始動後。曲を発表するたびに、彼女の歌声は強く、芯が太くなっていると思います。特に「アイリス」では歌の印象が少し変わった気がしたものですが、「UNLIMITED」の歌を体験した後で聴きなおしてみると、それが声の厚さに起因していることに思い至りました。どちらの曲も歌声が厚く、輪郭が浮かび上がるように存在感があります。

ミュージック・ビデオを構成する要素は、藍井エイルのリップシンクとタイポグラフィーでデザインされた歌詞です。リップシンクのカットは、アルバムのジャケットとともに、ロサンゼルスで撮影されたとのこと。尖った文字の連なりは明滅しながら、彩度の落ちた世界で歌う藍井エイルを侵食し、せめぎ合います。YouTubeで公開されている部分だけを観ても、タイポグラフィーによる演出は曲の勢いを増幅していることが分かります。

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