藍井エイル『Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF” at Kanagawa Kenmin Hall』:歌声と音と笑顔のカケラを集め、作り上げたひとつのステージ

fujiokashinya
5 min readFeb 4, 2020

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Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF”

藍井エイルの映像作品『Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF” at Kanagawa Kenmin Hall』がリリースされました。2019年5~7月に全国のホールを回ったツアー〈Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF”〉、その最終公演を収録した作品です。仙台で観たライブの記憶がリワインドされ、感動が思い出されます。

〈Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF”〉のセット・リストは、同年4月に発表されたオリジナル・アルバム『FRAGMENT』の全曲で固められました。その合間に組み込まれていたのが「INNOCENCE」、「シリウス」、「IGNITE」などの定番曲や、デビュー当時の曲「空を歩く」、発表されたばかりの新曲「月を追う真夜中」です。

『FRAGMENT』の中で僕が最も好きな曲は、ライブの中盤で披露された「螺旋世界」です。たくましさとファンキーな色気を兼ね備えた、踊れるロック。イントロが鳴った瞬間の感動は今でも覚えていますが、その記憶は、映像に記録されることでより強固なものになりました。「螺旋世界」の最大の特徴は、曲の頭からギターが奏でるフレーズです。間奏やエンディングでも響くこのフレーズは、聴けば聴くほど心を奪われます。赤と青の光に染まるステージで、音は螺旋を描き、観客を呑み込み、その記憶を書き換える。このフレーズを爆音のギターで浴びると、アルバムで抱いた第一印象を上書きするインパクトがあり、さらに好きになりました。

〈Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF”〉では、藍井エイルがギターを弾きながら歌う曲が増えました。そのうちの一曲が「SINGULARITY」です。分厚いロック・サウンドに自らのギターを重ね、それを背景に響くエモーショナルなボーカル。ふとした瞬間に心の柔らかい部分にそっと触れる、そんなイメージが浮かぶメロディを持った曲です。♪どれだけ傷ついても 生きたいと願ったのは君のせい♪ という部分の歌い方がとても好きです。ちなみに、終盤の「パズルテレパシー」でも楽しそうにギターを弾いており、そのときの写真がBD/DVDのジャケットを飾っています。

Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF” at Kanagawa Kenmin Hall (Trailer)

ライブの楽しみのひとつがアレンジの変化です。聴き慣れた曲であっても…否、聴き慣れた曲だからこそ、アレンジが変わることで印象は刷新され、その曲をもっと好きになります。それは、〈Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF”〉でいうなら「約束」です。『FRAGMENT』の最初に収録されています。

「約束」のオリジナルはストリングスとベースの効いた重厚なバンド・サウンドでアレンジされていますが、今回のステージではボーカル、ピアノ、アコースティック・ギターというシンプルな構成で披露されました。アコースティック・セットで演奏されると、歌声の輪郭が浮かび上がり、より鮮明になります。歌声やメロディの良さ、言葉に込められた思い。それらの魅力にもう一度出会い、そして素晴らしい歌であることを改めて感じた時間です。

ライブ本編のラストには、『FRAGMENT』でも最後を飾る「フラグメント」が演奏されました。からっとした雰囲気で爽やかに駆け抜けるバンド・サウンドが心地好い。アルバムでもライブでも、やはり最後というポジションが似合う曲です。このままずっと演奏してもらいたいと思いながら聴いていたことを覚えています。

「フラグメント」の演奏中、ステージ奥のスクリーンにはライブやジャケット撮影のワンシーン、オフショットなどが映し出されます。その記録は藍井エイルがたどってきた記憶の断片であり、「フラグメント」の歌詞、『FRAGMENT』のコンセプト、そして〈Eir Aoi LIVE TOUR 2019 “Fragment oF”〉のテーマにつながります。さまざまなカケラが集まって作品が生まれ、そして会場のすべての要素が集まってステージが作り上げられる。「フラグメント」のパフォーマンスや演出を通して、藍井エイルの音楽が形作られる様を目の当たりにし、その機会を得たことをとても嬉しく思います。

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Written by fujiokashinya

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