中平希『ヴェネツィアの歴史 海と陸の共和国』[PART1]:ヴェネツィアを軸にして拡張する世界史の記憶

fujiokashinya
Apr 6, 2020

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ヴェネツィアと聞いて思い浮かべるイメージは、やはり「水の都」でしょうか。僕はヴェネツィアについて「イタリアの有名な都市のひとつ」という程度の認識しか持っていませんでした。世界史に夢中になった高校生のときですら、1000年以上の歴史を誇るこの国家についてほとんど気に留めることなく、その歴史を知らないままに今日まで来ました。

今の形からは想像もつかない歴史が存在する、そのことに気づかされたのが、日之下あかめの漫画『エーゲ海を渡る花たち』です。15世紀半ば、イタリア北部のフェラーラを出発し、ダルマツィアやエーゲ海の島々に寄りながら、陥落直後のコンスタンティノープル(イスタンブル)までを旅する二人の少女を描きます。アドリア海とエーゲ海を渡るこの旅で、大きな役割を果たすのがヴェネツィアです。その興亡をもっと知りたいと思い、中平希『ヴェネツィアの歴史 海と陸の共和国』を手に取りました。

ヴェネツィアは5世紀に建国したとされます。9世紀から東地中海交易に進出し、13世紀にはその中心的存在になりました。15世紀には内陸の領土も広げます。しかし、15世紀半ばからはオスマン帝国の隆盛、大航海時代、西欧国家の中央集権化といった時代の変化に翻弄されて、国際商業都市としての地位は次第に低下しました。そして18世紀末、ナポレオンの侵攻によって共和国の歴史に幕が下ろされます。

本書を読むと、ビザンツ帝国やイスラム世界と西欧の橋渡し役、第四回十字軍の派遣、陸上領土の拡大など、さまざまな角度からヴェネツィアの歴史を知ることができます。また、外交とも関連する内政や商業形態の変化など、国家システムの構築にも言及されています。ヴェネツィアを軸にして世界史を捉えなおし、世界史におけるヴェネツィアの役割、意味を考える機会となりました。

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