くるり「ワールズエンド・スーパーノヴァ」:ループする音が身体を縛り、心を奪うエレクトロニック・ミュージック

fujiokashinya
Nov 12, 2024

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くるりのシングル「ワールズエンド・スーパーノヴァ」を知ったのは深夜に観たこの曲のビデオです。PVを流す音楽番組だったのか、ビデオのワンシーンを使ったCMだったのか記憶があやふやで、定かではありません。真っ白な背景で淡々と流れる無機質なエレクトロニック・ミュージック、という記憶だけが残りました。それからしばらく経ち、アルバム『THE WORLD IS MINE』を聴く機会を得て、この曲と再会します。

キックを効かせたリズム、淡々とした印象のエレクトリック・ピアノ、絡みつくギター。低空飛行を続けるようなサウンドが聴く人をループで縛り、その心を支配します。解放感が得られるとは言い難いものの、ハウス・ミュージックが好きな人には刺さるであろうアプローチです。そうした音に重なるボーカル・トラックは、音以上に無機質で、表情が見えません。それでも、曲が進むにつれ歌声はわずかな変化を見せ、その微細な変化が聴く人を虜にします。エレクトロニック・サウンドに惹かれた人もいれば、岸田繁の巧みなボーカル表現に魅せられた人もいる。聴く人を選びそうなエレクトロですが、歌によって間口の広い曲になったといえそうです。

アルバムには「WORLD’S END SUPERNOVA -Mix “Matuli”-」としてミックスを変えたトラックが収録されました。アレンジの傾向はシングルと同じですが、音を整理しています。いくつかの音を消したり小さくしたりすることで、相対的に強調されるリズム。そのリズム・トラックは曲の最終地点を越えて鳴り続き、次の「BUTTERSAND/PIANORGAN」にまで食い込みます。気づいたときには、すでに手遅れです。いつ終わるとも知れないループの中に僕らは捕らわれ、いつの間にか意識は溶けて音の一部と化します。

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