あいちトリエンナーレ2019 情の時代 AICHI TRIENNALE 2019: Taming Y/Our Passion [PART1]
愛知県は名古屋市と豊田市で開催されているイベント、「あいちトリエンナーレ2019」を鑑賞しました。午前中に豊田市美術館を中心としたエリアを回り、午後は名古屋市の会場を巡りました。次から次へと作品を鑑賞できるのが芸術祭の魅力です。
美術館から美術館への移動すらトリエンナーレの一部であるかのように思えました。ただの移動ではなく、芸術祭ならではの文脈が生まれるのかもしれません。作品に感化された状態で街を歩き、ふと周りに意識を向けてみると、街の空気や行き交う人々の表情が作品のひとつに見えてきます。
印象に残った作品がいくつもあります。小田原のどか「↓ (1946–1948)」、藤原葵「Conflagration」、Mónica Mayer「The Clothesline」、青木美紅「1996」、Regina José Galindo「LA FIESTA #latinosinjapan」、碓井ゆい「『ガラスの中で』」など、枚挙に暇がありません。展示内容が変更された作品もありますが、本来の形ではないにせよ、新たな文脈におかれた作品として向き合いました。
作家の意図をふまえて鑑賞すべき作品もあれば、何も考えずからっぽの状態で向き合う作品もある。そして、作品の中に埋没して、そこに所属しながら感じ取るインスタレーションもあります。僕は鑑賞者を取り囲むようにして静止物が展開するインスタレーションが好きなので、そうした作品がある場所では自然と足が止まりました。作家が定めた文脈に沿うかは別にして、作品を身体で感じながら、そこから派生するイメージを言葉にしたくなります。
どこまでがカンヴァスなのか、どちらが背景なのか。文谷有佳里の「『なにもない風景を眺める』ほか」に惹かれました。部屋に入った直後は、壁にドローイングが掛けられたシンプルな展示に思えたものの、ほどなくしてガラスにまで線が書かれていることに気づきました。線の群れは絵の中から飛び出し、こちらと向こうを隔てるガラスにまで広がります。センセーショナルでもSNS向きでもないのですが、鑑賞者の中にまで潜り込みそうな線の戯れは実に印象的でした。