Zedd「Stache」:全速力で飛び出すエレクトロニック・サウンドが聴き手を貫く
2012年にZeddがリリースしたアルバム『Clarity』の代表曲といえば、Foxesの美声が響く「Clarity」(グラミー賞のBest Dance Recordingを受賞)でしょうか。あるいはMatthew Komaの高音が印象に残る「Spectrum」でしょうか。また、2011年のシングル「Shave It」を編集した「Shave It Up」を挙げることもできます。
今ではそれらの曲にも魅力を感じていますが、僕が最初に好きになった曲は「Stache」というインストゥルメンタルです。Zeddの存在を知って手始めに『Clarity』を聴いたとき、この曲に衝撃を受け、彼の音楽の虜になりました。AVICIIと並び、僕をEDMワールドの奥へ導いてくれた音楽です。
緩急をつけて疾走する「Stache」のサウンドは、次々と新しい表情を見せます。ハイウェイを駆けるような勢いがあり、聴いていると身体にエネルギーが満ちてきます。さらに、この時期のEDMの特徴であるwobble bassが随所に顔を出し、音のパーツを楽しむこともできます。
「Stache」は最後まで仕掛けてきます。一瞬の空白を挟んで繰り出されるシンセサイザーのフレーズは力強く、聴き手をヒートアップさせます。どこまで僕らを熱くさせるのかと驚く展開です。畳みかけるような音の奔流、これぞEDMの醍醐味。この部分を発展させたextended mixがあったら聴いてみたいものです。改めて「Stache」を聴き、EDMの世界に僕を引きずり込んだその魅力は少しも衰えていないことを確認しました。