Zedd「Papercut [feat. Troye Sivan]」:音が美しく混淆するハウス・ミュージック
Sep 26, 2022
2015年にZeddがリリースしたスタジオ・アルバム『True Colors』は、EDMの熱さとポップスの親しみやすさが同居する作品です。いくつもの色が混ざり合うエレクトロニック・ミュージックの世界が広がります。
アルバムには、穏やかな音やメランコリックな音を特徴とする曲も含まれています。そういった抑制的な雰囲気の曲のひとつが「Papercut」です。静謐なピアノが鳴って、さざなみのように始まり、やがていくつかの音が重なります。
ボーカルをとるのはシンガー・ソングライターのTroye Sivanです。その歌声からは、感情を抑え、表情を殺しているかのようなクールさを感じます。しかし体温が低くて淡々としたなかにも熱いものが見え隠れする歌声です。
終盤になると音が熱を帯び、聴き手の気持ちを高めます。音が厚くなるにつれて、ひとつひとつの音が心地よく響き、気付いたときには混淆する美しい音に絡め取られている。その生々しい感触は、曲が終わりを迎えても余韻とともに残り続けます。