Zedd「Out Of Time [feat. Bea Miller]」:柔らかくも深みのある音を重ね、歌声は流線型を描く
Zeddの新作『Telos』が2024年8月にリリースされます。スタジオ・アルバムとしては三枚目。前作『True Colors』を発表したのが2015年なので、9年のインターバルを経て届く最新作です。6月、アルバムに先立って1曲目の「Out Of Time」が公開されました。
柔らかいエレクトロニック・サウンドがボーカルを支えるポップス。スピード感や分厚さより深みを追求した音といった感じでしょうか。加えて、ソフトな印象に貢献しているのがストリングスです。重なる音それぞれの存在感、織りなす音のコラボレーションを堪能します。聴き手を圧倒するようなプレッシャーはありませんが、奥に潜むものを見たくなる――そうした「隙間」が見える曲です。
ボーカルとして参加しているのはBea Millerというシンガー・ソングライターです。気怠い雰囲気を醸す歌声が、音に馴染み、音と溶け合います。ストリングスの音とともに歌声が流線型を描き、揺らぐ波のように漂います。いつの間にか現実と切り離されて、音と声で塗り固められた虚構が聴き手を呑み込みます。
「Out Of Time」はアルバムのリードトラックの役割を担う曲ですが、アルバムのすべてをカバーしているわけではないはずです。この曲調がメインなのか、それとも数ある要素のほんの一部でしかないのか。リリースまでの時間を埋めるのはイマジネーションです。アルバムの全貌が明かされるまで想像の余白は拡がります。