Zedd「Ignite」:音は点火の輝きを表現する、聴き手の心を解放する
点火する瞬間の輝きを思わせるエレクトロニック・サウンド。2016年にZeddが「Ignite」を発表しました。「League of Legends」というゲームの世界大会のために制作された曲で、スタジオ・アルバム『True Colors』の翌年にリリースされた数々の曲のひとつです。
「Ignite」は低空飛行のような抑制的な音で始まり、時間を費やしてエネルギーを溜め込みます。Tim Jameのボーカルも音に合わせて抑えめで、来るべき臨界点を待ちます。蓄積されたエネルギーは、やがて♪Ignite!♪という叫びを合図にして一気に放出されます。
臨界点を過ぎると、身体を刺激するサウンド、気持ちを解き放つサウンドが聴き手を襲います。助走をつけて高く跳躍するEDMらしい展開といえます。「Ignite」が生み出す盛り上がりは、Zeddが注目され出した頃の傾向を思わせます。
同時期のコラボレーション(Aloe Blaccと組んだ「Candyman」やHailee SteinfeldとGreyと制作した「Starving」など)と比べると、多くのファンの記憶にある音に回帰した感があります。もちろんZeddの幅広さはEDMという枠に留まりませんが、ベースキャンプのようなポジションに一度立ち返ってみると、原点の魅力を再認識できます。そしてまた新たな頂上へのアタックが始まります。この後、Zeddの音楽はさらに拡がり、貪欲に新しい表現に突き進みます。