Yes「Our Song」:キャッチーなサウンドでバンドの存在理由を拡張したポップ・ソング
Yesのスタジオ・アルバム『90125』に収録された曲は、すべてがポップだと断じても過言ではありません。では、アルバムで最もポップな曲は何か。僕が挙げるのは「Our Song」です。Yesを知ろうが知るまいが、アルバムを聴いた人に問えば同じ答えが返ってくるのではないでしょうか。1983年のリリース当時であっても40年が経った今でも変わらないはずです。
どこを切り取っても明るい音やキャッチーなフレーズが聞こえます。イントロだけ、Chorusだけという部分的なキャッチーさではありません。サウンドもメロディも歌声も余すところなくポップな色に塗られていて、フルレングスを聴いても一部を聴いてもポップさに驚きます。徹頭徹尾、ポップ。
イントロをはじめ、各所でシンセサイザーが奏でるメロディやリフが好きです。1980年代を象徴するかのように煌めくシンセサイザー・サウンドは、ボーカルと入れ替わりに姿を見せ、曲を牽引します。生楽器の音に近づく前の、いかにも電子音というサウンドが心地よい。シンセサイザーに引っ張られ、ギターやリズム・セクション、そしてボーカルすらも軽やかに響いて、曲のポップさを強めています。
「Owner Of A Lonely Heart」や「Changes」も充分にポップで聴きやすいのですが、輪をかけてポップなのが「Our Song」です。これほどまでにシャイニーな音を、プログレの代表格だったバンドが出すなんて信じられません。しかし、自らを縛っていたステレオタイプから解放されると、この軽快さやキャッチーさが大きな価値となりました。今では聴くたびに中毒性の高い快感が身体中を駆け巡ります。