TM NETWORK「あの夏を忘れない」:肌に残る音の痕跡、絡み合う夏の記憶

fujiokashinya
Sep 1, 2024

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TM NETWORK(1991年時点の名義はTMN)のアルバム『EXPO』に、ハウス・ミュージックを意識した曲がいくつか収録されました。その一角を占めるのが「あの夏を忘れない」です。日本語の曲名を持ち、歌詞にも英語がほとんど使われないのに対し、バックトラックは洋楽的なハウス・ミュージック系の音で満たされています。

ゆるりとしたテンポで、ループにループを重ねる音が聴く人を包みます。海面に反射する夏の光のようにきらめき、ベースやギターの音と絡み合うエレクトロニック・サウンド。歌が始まると、艶のある言葉が次から次へと流れ出ます。言葉の奔流が止まったかと思えば、音が再び聴き手を抱きすくめ、放しません。

『TMN CLASSIX 1』では「あの夏を忘れない -motion picture mix-」が聴けます。音を絞ったアンビエント系のアプローチであり、ボーカル・トラックの醸す哀愁が一段と濃くなりました。静まり返った真夜中、月の光が差し込む部屋で聴きたいリミックスです。

ライブでのパフォーマンスで思い出すのは、リズムの存在感をぐっと強めた2022年のステージです。濡れた色気がまとわりつくベース、跳ねるように音を刻むハイハット、テーマ・メロディを繰り返すシーケンス・サウンド。リズムやテーマ・メロディの徹底したループが観客を中毒症状の渦に呑み込みます。加えて、木根さんのNord Pianoが鳴らすエレクトリック・ピアノ系の音、ここぞというところで小室さんが響かせるMoog Oneの太い音が曲を彩り、ライブならではの変化も楽しめました。

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fujiokashinya

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