TM NETWORK「WE LOVE THE EARTH」:ハウス・ミュージックとポップスが交錯し、二人の世界を描く「踊れるラブソング」
TM NETWORKの「WE LOVE THE EARTH」は1991年にリリースされました。セット・リストに並ぶ機会が比較的多く、節目のコンサートで演奏される曲のひとつです。その演奏風景は、1994年の〈TMN 4001 DAYS GROOVE〉、2004年の〈TM NETWORK DOUBLE-DECADE TOUR FINAL “NETWORK”〉、2012年の〈TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-〉などの映像作品に残っています。
小室さんは「WE LOVE THE EARTH」のサウンドを「8ビートとハウス・ミュージックの融合」と説明しています。1990年代初頭に流行していたハウス系の音を取り入れ、自らのフィルターを通して解釈し、オリジナルのサウンドに仕上げました。ハウス・ミュージックの要素を含んだポップスであり、歌メロの良さとエレクトロニック・サウンドの心地好さを同時に味わうことができます。そして踊るのに適したテンポなので、ダンス・ミュージックとしても楽しめる曲です。
さらに、曲のなかで際立つのがウツのボーカルです。1990年のTMNへのリニューアルからウツの歌声が色気を増していて、加えて、「WE LOVE THE EARTH」では柔らかくて甘い歌を聴くことができます。その歌声を媒介して届く歌詞は、地球全体を見下ろす視点から、ぎゅっと地上にフォーカスして、一人に向けて言葉を届けます。身体はサウンドに包まれ、心は歌声に魅了されます。「踊れるラブソング」というべきでしょうか。
アルバム『EXPO』には、シングルの音を一新した「WE LOVE THE EARTH -Ooh, Ah, Ah, Mix-」が収録されました。オリジナルがポップス寄りなのに対して、このリミックスではハウス・ミュージックの色が濃くなっています。ニューヨークから呼んだエンジニアによってミックスされており、世界で通用する音を追究していたことが分かります。新しく加わった長いイントロ、色気と厚みを増したベースやキック、音が抜けてスネアだけになる展開など、オリジナルの印象が刷新されるポイントがいくつもあるリミックスです。当時のツアーではこのミックスをもとにしたアレンジで演奏され、ストリーミング・サービスで配信されているアウトテイク/ライブ音源集の『TMN GROOVE GEAR』で聴くことができます。
公式のYouTubeページでは、2015年の〈TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA〉でのパフォーマンスが公開されています。アレンジはオリジナルに近く、ウツの歌や、木根さんを中心としたコーラスの魅力が存分に伝わる映像です。イントロをはじめ、間奏やエンディングでも歌われるフレーズは、木根さんを中心として会場全体でsing alongします。ミラーボールに当たって観客席を照らす光が、全員で歌うこのフレーズを輝かせ、そして無数の笑顔を咲かせます。どれだけ聴いても、そしてどれだけ歌っても、このフレーズの魅力は色あせません。