TM NETWORK「U.K. PASSENGER -u.k. lap techno mix-」:The Wild Bunchのラップを軸にしてTKテクノのグルーヴを埋め込んだリミックス
TM NETWORKが1986年にリリースしたアルバム『GORILLA』で、「PASSENGER ~a train named Big City~」という曲が聴けます。TM NETWORKには珍しくヒップホップの要素を感じる曲であり、存在感を放つのがラップです。イントロはニューヨークのラッパーで、エンディングはロンドンのThe Wild Bunch――後にmassive attackを結成する――という構成は小室さんが考案しました(『TM NETWORK WORLD HERITAGE DOUBLE-DECADE COMPLETE』より)。スタッフがThe Wild Bunchと六本木のレコード店で遭遇し、レコーディングに参加してもらったそうです。
ヒップホップに傾倒した曲がほとんどないTM NETWORKにとって「PASSENGER」は希少です。グループの軸をダンス・ミュージックに据え始めた当時、他の曲とは違う角度で存在感を放つ曲になりましたが、40年近いキャリアのなかでも独自性が際立ちます。他にヒップホップと呼べるのはラッパーのCOMMONが参加した「10 YEARS AFTER」のリミックスでしょうか。
1993年に小室さんは新しい生命を「PASSENGER」に吹き込み、「U.K. PASSENGER -u.k. lap techno mix-」としてアップデートします。エンディングのラップをフルレングスで使い、当時追求していたテクノ系の音を重ねました。原曲のファンキーさを継いだホーン、硬軟交えて駆け抜けるエレクトロニック・サウンド、リズミカルに言葉を連ねるThe Wild Bunchのラップが融合します。2分ほどの短いトラックながら、脳も身体も強烈に刺激される、聴き応え抜群のリミックスです。