TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-:新たな生命とリスペクトを込め、40周年のCELEBRATIONで包んだギフト
TM NETWORKのデビュー40周年に関する企画のひとつとして、11組のアーティストによるカバー・アルバムが2024年5月にリリースされました。タイトルは『TM NETWORK TRIBUTE ALBUM -40th CELEBRATION-』です。原曲へのリスペクトを感じるのと同時に、各アーティストのオリジナリティが反映された曲が並びます。
参加アーティストのリストを見て真っ先に、そして大いに驚いたのがB’zです。しかもカバーする曲が「GET WILD」というニュースに驚きは膨れ上がりました。松本孝弘が最初のツアーから初期TM NETWORKの集大成である1989年のツアーまでサポートし、1987年に発表された「GET WILD」も弾いていたことは有名です。松本孝弘の濃密なギター・サウンドと稲葉浩志の唯一無二の歌声が吹き込まれた「GET WILD」は、40周年という特別な区切りに届けられた嬉しいギフトです。
「LOVE TRAIN」では西川貴教の力強いボーカルが新たな像を結びます。TK SONG MAFIAのアレンジによるバックトラックは、オリジナルで入っていたギターのリフがないためか、印象が変わって新鮮に感じられました。もともとファンであり、TM NETWORKの曲の解像度が高いくるりがカバーしたのは「STILL LOVE HER」です。原曲の穏やかさを活かして再解釈した音のなか、体温低めのボーカルがオリジナルとは異なる雰囲気を放ちます。エンディングで「THIS NIGHT」を歌うという遊びのある演出も素晴らしい。
澤野弘之が制作した「BEYOND THE TIME」はドラマチックな曲に仕上がっています。その大きな要因はSennaRinのボーカルでしょう。クールな雰囲気が強かったオリジナルとは異なり、切なくて感情が弾けるようなボーカル表現に魅せられます。CAPSULEの「SELF CONTROL」は特徴的なシンセサイザーのリフを引き継ぎ、その魅力を最大限に引き出します。無機質さが漂う女性ボーカルのためか、1987年の〈TM NETWORK FANKS CRY-MAX〉で披露された演奏を思い浮かべました。
他の曲でも、個性的な歌声とアレンジが新しい生命を与えます。例えば、松任谷由実が歌い、SKYEの音が支える「HUMAN SYSTEM」は、物語の朗読を聞いているように思えました。mitoがプロデュースした音で満島ひかりが歌った「ELECTRIC PROPHET」も独特の空気を漂わせます。たとえるならば一人芝居でしょうか。一筋のスポットライトを浴び、小室さんの歌詞の世界を表現する役者。そして、ヒャダインとDJ KOOによる「MARIA CLUB」のリミックスは、テンポを上げてキラキラした音でデコレートしており、40周年のお祭り感が最も出ているトラックです。