TM NETWORK「TIME TO COUNT DOWN -TK Remix-」：再構築されたサウンドが運ぶ新しい印象、心の中で唱和するメロディ

TM NETWORKの「TIME TO COUNT DOWN」は1990年にリリースされた曲です。ハード・ロックやプログレなどTM NETWORKにおけるロック・スタイルの変遷を語るうえで欠かせませんが、一方でトランスにリミックスされたこともあり、エレクトロの文脈にも位置づけられます。

〈TM NETWORK TOUR 2022 FANKS intelligence Days〉の最終公演で「TIME TO COUNT DOWN」がセット・リストに追加されました。このときのアレンジをもとにしたのが、アルバム『DEVOTION』の「TIME TO COUNT DOWN -TK Remix-」です。テンポを落とす、構成を変える、エレクトロに寄せるといった点でオリジナルからの乖離が楽しめます。

TM NETWORK: DEVOTION (Album sampler)

イントロで響くオーケストレーションが強く印象に残ります。この広がりのあるシンフォニックな音はSpitfire Audioなど複数の音源ライブラリから構築されました（『Sound & Recording Magazine』2023年8月号）。イントロから意表を突かれ、ロックやトランスの記憶が刷新されます。

TK Remixではシンセサイザーが新しいフレーズを奏で、重厚だったリズムは軽快な響きに変わりました。全体を貫くピアノのクリアな音も印象の変化に貢献します。そして、特筆すべきはコーラスです。ブリッジの役割だったコーラスが、TK Remixでは曲の軸として何度も顔を出します。ライブではスクリーンに “sing along in your heart” と映し出され、声の出せないなかでステージと観客席をつなぐ役割を担いました。

TM NETWORK『DEVOTION』：音が刻む再起動の痕跡、現在を映し未来を示すキーワード