TM NETWORK「RAINBOW RAINBOW」:七色の魔法で染め上げたシンセサイザー・ミュージック
1984年にキャリアをスタートさせたTM NETWORKが初めて発表したアルバムのタイトルは『RAINBOW RAINBOW』です。表題曲の「RAINBOW RAINBOW ~陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜~」は、キラキラ輝くポップなイメージが浮かぶ音を軸にしながら、哀愁を漂わせる音も織り込んでいます。シンセサイザー・サウンドで独自の色を出そうと模索していたころの姿が映し出された曲なのではないでしょうか。
デビュー盤の表題曲ということもあり、特に1980年代のコンサートでは演奏される機会が多く、いくつかのライブ音源や映像で当時の雰囲気を知ることができます。コンサートでは、スタジオ・レコーディングで主にシンセサイザーの切なげな音が埋めていた間奏が、ギタリストやベーシストの見せ場となりました。例えば、1985年の〈DRAGON THE FESTIVAL TOUR featuring TM NETWORK〉では松本孝弘と西村麻聡、1994年の〈TMN 4001 DAYS GROOVE〉では北島健二による素晴らしいソロ演奏が聴けます。
1989年にはニューヨークでリミックスされた音源が『DRESS』に収録されました。制作したのは、Madonnaをはじめとする著名なアーティストのプロデュースやリミックスを手掛けたJellybeanです。『DRESS』で聴けるリミックスはオリジナルのイメージを残しつつも、ビートが強調され、クリアなエレクトロニック・サウンドが明るさと同時にメランコリックな空気を出しています。そして間奏の音からは、冷えた金属に触れたときのような無機質な冷たさが感じられます。
その後しばらく潜伏していた「RAINBOW RAINBOW」が新しいスタイルで生まれ変わったのは2014年。初期の曲を中心にリメイクしたアルバム『DRESS2』で「RAINBOW RAINBOW 2014」が聴けます。このアルバムの特徴である「EDMに傾倒したTM NETWORK」の一角を占める曲です。リリース直後のツアー〈TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end〉で披露されました。
「RAINBOW RAINBOW 2014」のポイントは、イントロのリフがそのままAメロを突き抜けていくところです。オリジナルからあるフレーズを少し変えてリフレインさせ、テンポアップして使っています。このリフが生み出す快感は格別であり、中毒症状すら引き起こします。間奏やエンディングでも顔を出すため、一度消えてもまた戻ってきて、そのたびに気持ちが盛り上がります。魔法のように聴き手を魅了するエレクトロニック・サウンドに身を委ねてみましょう。