TM NETWORK「LOUD」:ポップスとEDMのハイブリッド、潜伏者の物語を綴るスペースシップ

fujiokashinya
Apr 22, 2022

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2014年4月22日。1984年4月21日にデビューしたTM NETWORKの「30年の最後の一年間」が始まるタイミングで、シングル「LOUD」がリリースされました。TM NETWORKらしいサウンドと歌声と映像が組み合わさった曲です。

「LOUD」を構成する音のなかでも、インパクトが大きいのが高密度のキックと艶のあるベースです。1990年代から一貫して、小室さんはエレクトロニック・ミュージックのリズムでポップスの音に厚みを持たせることを重視しています。そのアプローチは各時代の音を取り込みながら続きました。2013年からEDMに傾倒したことで、ポップスとEDMをブレンドした音が生まれ、「LOUD」にも引き継がれています。

同時に、「LOUD」のサウンドは歌声を大事にします。三人のハーモニーは結成当初から重視されましたが、その重要性は2012年以降に一段と大きくなりました。控えめだった小室さんの声が前に出るようになったためです。ウツを中心に三人で編み上げる歌声は、単なる加算ではなく乗算で広がり、「TM NETWORKの歌声」を作り出します。「三人がそこにいる」という感覚を抱かせてくれるコーラスワークです。

Music video by TM NETWORK performing LOUD

「LOUD」のミュージック・ビデオは、2013年の〈TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-〉と2014年の〈TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end〉というふたつのコンサートをつなぐ内容です。映像は地上での潜伏活動を終えた三人の潜伏者がスペースシップに乗り込むシーンから始まります。潜伏者たちは白い通路を進み、ドアが左右にスライドして開くと、その奥に消えます。そして鳴り響く「LOUD」のイントロ。

視点は「LOUD」の音楽に合わせ、奥へと進んでいきます。ドアがすっと開き、白い空間が現われ、再び進み、ドアが開くと、次の部屋が姿を見せます。潜伏者のひとりは歌を歌う、もうひとりはベッドから起き上がる、別のひとりは絵のない額縁の中を覗き込む。最後のドアが開いた先にいるのは、潜伏者の腕に抱かれた小さな生命です。音と映像が消え、物語は次の物語にバトンを渡しました。

「LOUD」は30周年プロジェクトのスタートという節目に発表された記念碑的な曲ですが、その枠には留まりません。〈TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end〉のオープニングで披露され、その後も〈TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30〉と〈TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30 HUGE DATA〉、そして2021年の〈How Do You Crash It? two〉でもセット・リストに名を連ねました。エンディングを伸ばす、イントロをアコースティック系の音に変える、EDMに寄せて新しいフレーズを加えるなど、ライブのたびに変化を見せる曲であり、「変わり続けるTM NETWORK」の一端を示しています。

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Written by fujiokashinya

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