TM NETWORK「JUST LIKE PARADISE」:音は夜の陰に紛れ、指先で境界線に触れる
無機質なのに艶のあるエレクトロニック・サウンドがループし、聴く人に絡みつく。TM NETWORKの「JUST LIKE PARADISE」は、1991年にTMNの名義でリリースしたアルバム『EXPO』に収録された曲です。ハウス・ミュージックの音を介して中毒性の高いメロディが身体に流れ込み、心は音の快感に支配されます。
『EXPO』のテーマの一角を占めるハウス・ミュージックを体現した曲のひとつです。いくつもの音が顔を出しては消え、グラデーションを描きながら表情豊かなサウンドを形成する。そうした音に包まれた歌は、ときにラップの雰囲気も醸しながら、独自の世界を描きます。すべての歌詞は英語で書かれていて、クールな言葉が並ぶなかに垣間見えるのは、シニカルな表情や隠しきれない色気。ふたりが交わす親密な会話のようにも、すれ違って交わらなくなった言葉の残骸にも思えます。
リリース当時のツアーでは、ライブの中核を担う曲として活躍しました。オリジナルの音を下敷きにしてバンドで表現したアレンジです。音源で他の音に紛れていたフレーズを発展させて前面に押し出し、さらにこのフレーズは、終盤に展開されるシンセサイザーのアドリブ演奏に組み込まれ、新たな姿を得ます。ダイナミックかつメロディアス、大胆かつ叙情的なシンセサイザー・プレイです。圧倒的で強烈なプレゼンスを示す音の博覧会は、永遠にも一瞬にも思える素晴らしい時間に満ちています。