TM NETWORK「HUMAN SYSTEM」:重なるメロディが人々のつながりを象徴する

fujiokashinya
Oct 3, 2022

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TM NETWORK「HUMAN SYSTEM」はメロディの美しさが際立つミディアム・テンポの曲であり、1987年にリリースされたアルバム『humansystem』の表題曲です。ウツの歌声が届ける歌メロも、ピアノやギターが奏でるメロディも心に残ります。小室さんは「歌のうしろにいくつものメロディが独立して動いていて、それが最後に一緒に出てくる仕掛け」(『キーボード・ランド』1987年12月号)と解説しました。多彩なメロディが重なって層を作り、心地よい空気で僕らを包んでくれます。

A quote from the interview with Tetsuya Komuro

また、この曲の特徴はイントロとエンディングにWolfgang Amadeus Mozartの「Sonata for Piano №11 K 331」が引用されている点にあります。コンサートでは、アコースティック・ギターを弾く木根さんの見せ場のひとつです。小室さんが書いたメロディと、Mozartの有名なメロディがシームレスにつながり、「HUMAN SYSTEM」の音楽世界を一層豊かにしています。

HUMAN SYSTEM

L.A.での録音には手練れのミュージシャンが加わりました。Average White BandのドラマーSteve Ferrone、Missing PersonsやDuran DuranのギタリストWarren Cuccurulloが参加しており、サックスを吹き込んだLarry WilliamsはMichael Jacksonのライブでも演奏しています。人選について、小室さんは「自由に、こういう曲にはこういう音が欲しいから、と選んだのだからゼイタクと言えますよね」と語りました。イメージした音を的確に形作ったことが窺えます。

A quote from the interview with Tetsuya Komuro

そして、責任とともに自信も大きくなってきたことが、「はるかに自分の想像を超えるものが出てきたら、それは素晴らしいことだけど、プロデューサーとしては失格なわけですよね。自分の感性が負けてしまったわけだから」という言葉に表われています。ソングライター、ミュージシャン、そしてプロデューサーとしての感性が交差する小室哲哉という存在は、この時点でひとつの到達点にあったのでしょうか。

HUMAN SYSTEM -café de paris mix-

1993年には、エレクトロに変貌した「HUMAN SYSTEM -café de paris mix-」が『TMN CLASSIX 1』に収録されました。「Café de Paris」とは当時ロンドンで小室さんが足を運んでいたクラブの名称です。ミックス名に冠したのは、この時期のロンドンで体験した音にインスパイアされたことを示しているのかもしれません。また、分厚いエレクトロニック・サウンドのなかで響くLarry Williamsのサックスは、オリジナルよりも存在感が大きくなり、その哀愁が際立ちます。強烈なリズムに包まれながら、輝きを放つ音です。

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