TM NETWORK「COME ON EVERYBODY」:スタイルを変え、音を変えて、踊りたい欲望を刺激するダンス・ミュージック
TM NETWORKの「COME ON EVERYBODY」はアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』の収録曲です。アルバムが発表される直前、1988年の11月にシングル・カットされました。シングルとアルバムでアレンジの方向は同じですが、音の抜き差しやエフェクト処理などミックスが異なります。シングルは音が厚くなっているものの、起伏はあまりなく、アルバムの音は細く聞こえますが、強弱のつけ方が明確です。
イントロからAメロを貫き、そしてサビで登場するリフが特徴的で、踊るために作られたと確信できる曲です。このキャッチーなリフを松本孝弘のギターで聴けることが楽しい。さらにリフの魅力は逆説的に、音が抜けることで強調されます。アルバム・ミックスでは二番の後、間奏が終わって最後のサビに入るときにギターが抜けます。歌とリズムだけの音楽空間は、再びリフが聞こえたときの気持ち良さをぐっと高めてくれます。
この曲の元ネタはライブで演奏された「COME ON LET’S DANCE」の一部と思われます。エンディングで小室さんが弾いたリフが1987年のライブ音源に残っています。アドリブで生まれたであろうこのフレーズが、ほぼそのまま「COME ON EVERYBODY」のリフになりました。2012年のライブでは「COME ON EVERYBODY」の途中で「COME ON LET’S DANCE」が差し込まれ、再び「COME ON EVERYBODY」に戻るという、曲の生まれたエピソードを題材にした演出が見られました。
Nile Rodgersによるリミックスも特筆すべき点です。Nile Rodgersがギターを入れてSynclavierで再構築した「COME ON EVERYBODY (with NILE RODGERS)」が1989年に発表されました。軽快に響く音の群れが心地よく、特に際立つのは散りばめられたサンプリング・ボイスやパーカッションを効かせたリズムです。オリジナルとは異なるアプローチでダンス・ミュージックらしさを強め、聴き手の踊りたい欲望を刺激します。
基本的にライブではオリジナルに準拠したアレンジで披露されます。しかし、突出してユニークだったのは、ロックに傾倒した1990~1991年の〈RHYTHM RED TMN TOUR〉です。テンポを落とし、ギターの音をトーキング・モジュレーターで歪ませ、スネアの効いたリズムに支えられてピアノの凛とした音が響きます。オリジナルともリミックスとも異なり、印象が大きく変わりました。
インタールードで主役を担うピアノは、奔放な演奏で新しいフレーズを生み出します。強いていうならジャズ、それもダンサブルなジャズに近いアプローチです。一方で、終盤に重ねられるシーケンサーのフレーズはオリジナルのリフに変化を加えたもので、ハウス・ミュージックの要素を含みます。ダンス・ミュージックとしてのクオリティを高めるために共闘するロック、ジャズ、ハウス。このツアーだけの唯一無二のアレンジであり、強烈な印象を残したパフォーマンスです。