TM NETWORK「BEYOND THE TIME」:メロディと音の記憶が時を越えて人々を接続する

fujiokashinya
Sep 19, 2021

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1988年にリリースされたTM NETWORKのシングル「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~」は、ファンのみならず多くの人に知られるTM NETWORKの曲のひとつです。映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌として使われたため、メロディを耳にすれば思い出す人は少なくないと思われます。次に発表されたシングル「SEVEN DAYS WAR」と並び、知名度の高い映像作品に起用された点で当時のTM NETWORKの勢いを表わす曲です。

いくつもの音が重なっていて、壮大さを感じる部分もありますが、基本的には各楽器が紡ぐメロディをじっくりと聴かせるアレンジです。ギターとシンセサイザーが交錯して描く音の世界は、ダイナミックに起伏しながら味わい深く響きます。また、1986年から1987年にかけて取り入れたファンクの要素、なかでもホーンの音がここでも存在感を放ちます。後半の盛り上がる部分では、色気と哀愁に満ちたサックスの響きを味わうことができます。

BEYOND THE TIME (TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-)

主にロンドンで録音されたアルバム『CAROL -A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』には、ミックスを変えた「BEYOND THE TIME -Expanded Version-」が収録されました。日本で制作されたオリジナルの音を分解し、組み立てなおしたのは、アルバムのミックスを手掛けたエンジニアです。リミックスというほど大胆に音や構成が変わっているわけではありませんが、音が整理されているというべきか、オリジナルと比べて音の輪郭がはっきりしていて、ひとつひとつが際立って響きます。

小室さんのインタビューによると、まずはエンジニアに「BEYOND THE TIME」を自由にミックスしてもらい、どのようなバランスで音を調整するのか把握したとのことです(『Keyboard magazine』1989年1月号)。その結果からアルバムの最終形をイメージしたのでしょう。Expanded Versionは、音の面でアルバムの輪郭というべきものを作り上げたといえるかもしれません。

BEYOND THE TIME (TM NETWORK FINAL MISSION -START investigation-)

発表当時を除くと、コンサートで「BEYOND THE TIME」が演奏されたケースはそれほど多くありません。しかしながら2012年から2014年にかけては、毎年セット・リストに名を連ねました。2012年には、儀式のように荘厳なキーボード・ソロを受けて披露され、宇宙の壮大さを思わせるダイナミックさを感じました(曲の最後に響くVirus Indigo 2 Redbackの音が素晴らしい)。2013年はTM NETWORKの三人がステージに揃うときの曲に選ばれ(ソフト・シンセの中で屹立するSledgeの音が素晴らしい)、反対に2014年はコンサートの本編を締めくくる役割を担います。

このときは三年にわたりコンサートのテーマもサウンドも変遷しました。「BEYOND THE TIME」が披露されるたびに、同じ曲でありながらその都度新鮮に響き、「文脈や背景が変われば曲に対する印象は変わる」ことを実感したものです。アレンジの方向性は同じでもコンサートにおける役割や音が異なることで、新しい表情を見ることができます。記憶に刻まれる素晴らしい音楽体験でした。

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Written by fujiokashinya

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