TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -DEVOTION-
聞こえてきたのは、街を行き交う人々の話し声や走り去る車の音などが入り混じった雑多なノイズ。TM NETWORKが2023年9月から全国ツアー〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -DEVOTION-〉を開催し、11月の終わりに東京国際フォーラムのホールAで最終公演を迎えました。2022年のキーワード「FANKS intelligence Days」を継承し、2023年に掲げたキーワード「DEVOTION」と2024年のデビュー40周年に向けた「40th」を埋め込んだツアー・タイトルです。
全体を最初の「Avant」と最後の「intelligence Days」というインストゥルメンタルで括って、その中は最新シングル「Whatever Comes」で始まり、『シティーハンター』を通して対となる「GET WILD」で締める構成。その間には、6月にリリースしたアルバム『DEVOTION』の収録曲、今の音に馴染むようアレンジが工夫された既存の曲が散りばめられます。木根さんと小室さんが歌う「Show my music beat」や、ツアー終了後に配信が始まった「Angie」といった新曲も披露されました。
いくつかの曲のアレンジや構成が大胆に変わったのが印象的でした。例えば「FOOL ON THE PLANET」では、歌が入る部分のリズムを抜き、オーケストレーションによる壮大な音を前面に押し出しました。また、「KISS YOU -TK Remix-」をサンプリングして、肉厚のorchestra hitを「COME ON EVERYBODY」のイントロに接続させました。EDMの音で会場が満たされ、観客の踊りたいという欲望を掻き立てます。
EDMに染めるアレンジは随所に見られました。強力なキックとエレクトロニック・サウンドを主体としたことで、ギターや生ドラムで構築されていた「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」がロックを呑み込んだEDMに変貌します。続く「CHILDREN OF THE NEW CENTURY」では、ウツのボーカルが入らない部分でEDMスタイルが強調されているように感じました。録音されたコーラスが響き、勢いよくエレクトロニック・サウンドが飛び出す。その様子は、大きな会場でEDMアーティストが披露するパフォーマンスを思わせました。
2022年のツアーと同じく、今回もリズムの心地よさを感じました。ステージに立つのは三人だけなので必然的にベース、キック、スネアなどは打ち込みですが、後方で鳴るだけのサポーティブな存在ではありません。三人のパフォーマンスを支える役割を果たしながら、自らもプレゼンスを示します。スタジオ・レコーディングの時点でリズムが特徴的で魅力を放っていた曲、例えば「DEVOTION」、「COME ON EVERYBODY」、「THE POINT OF LOVERS’ NIGHT」がさらに格好良くなりました。リズムを全身で受け止めながらTM NETWORKのメロディとサウンドを浴びる音楽体験は格別です。
今回のツアーでも明確なストーリーが提示されることはなく、抽象度の高い演出でした。そうしたなかで、散見された具体的な要素から僕がイメージしたのは「都市に潜伏するTM NETWORK」です。「Whatever Comes」すなわち『シティーハンター』の世界観とリンクする一方で、これまでTM NETWORKが築いたイメージにも合致します。そして最後に映し出された映像が、どこかに潜むTM NETWORKの姿を捉えます。エピローグのようにもプロローグのようにも見えるシーンを記憶に刻み、僕らが向かうのは次のフィールドである〈TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days -STAND 3 FINAL-〉です。