TM NETWORK「風のない十字路」:乾いた音に包まれ、哀愁の旋律で岐路を歌う
TM NETWORKが2004年2月にリリースしたシングル「NETWORK」は、三曲の歌モノとそのインストゥルメンタルで構成されています。トランスに傾倒した「SCREEN OF LIFE」と「TAKE IT TO THE LUCKY」、そして木根さんが書き下ろした「風のない十字路」というバラードです。
木根さんのエッセイから読み取るに、当初はデビュー曲のリメイクである「TAKE IT TO THE LUCKY」を表題曲にして木根さんの曲を加え、二曲入りのシングルにする予定でした。小室さんはこのバラードに詞をつけようとしたものの、最終的に新しい曲をつくって詞を書くことを決めます。そうして「SCREEN OF LIFE」が生まれ、木根さんが書いた曲のタイトルは「風のない十字路」となりました。
四つ打ちでトランシーな他の二曲とは異なり、薄く乾いた印象のサウンドが「風のない十字路」の特徴です。寂寥感を呼び起こす音が、哀愁に包まれたウツのボーカルやサビのコーラスを引き立てます。曲の序盤はリズムを入れずに、ピアノを中心にサウンドを組み立てます。やがてフェードインするスネアや、裏で鳴っているギターは控えめで、曲のサポート役に徹します。次第に音が重なり、ベースが強められる、ギターが前に出てくるなど瞬間的に厚くなり、湿り気を帯びるシーンも散見されますが、それでも曲を包むのは総じて薄めで乾いた音です。
アルバムへの収録にあたって「NETWORK」の曲はスピード感を抑え、重厚な音でミックスされました。「風のない十字路 -ALBUM MIX-」もシングル・ミックスとは受ける印象が異なります。オーガニックでフォーキーな空気を感じたシングルに対し、アルバム・ミックスではイントロが壮大になり、全体的にエレクトロニック・サウンドの印象が強くなりました。ベースを筆頭にリズムを強調した点も見逃せません。トランスの要素を埋め込んだアルバムに馴染むように調整されたミックスです。