TM NETWORK「クロコダイル・ラップ」:リズミカルに響く音、軽やかに吹き抜ける言葉の風
TM NETWORKのデビューから40年近く経った今、1984年4月21日に発表されたシングルやアルバムを聴くのはタイム・カプセルを開ける行為に似ています。デビュー作ならではの空気が詰め込まれた音や歌は、今の空気を震わせ、やがて混ざり合います。そうした曲のひとつが「クロコダイル・ラップ ~Get away~」です。Culture Clubなどニュー・ロマンティックの影響が見えるリズムは、聴きながら歩くとき、心なしか身体を軽くしてくれます。軽快で乾いたイメージが浮かぶリズムの一方で、シンセサイザーの音、ギターのリフや歌メロからは湿度の高い哀愁が感じられます。そうしたミスマッチもまた、この曲の魅力です。
最初のアルバムでは洋楽らしさをアピールする曲が散見され、特にデビュー・シングルの「金曜日のライオン」はその狙いがよくあらわれた曲です。B面に収録された「クロコダイル・ラップ」もまた、ニュー・ロマンティックや英語詞ラップといった洋楽的なアプローチが色濃く、この時期の傾向がよく分かります。英語詞のラップは、間奏では二番のサビから最後のサビに勢いよくつなぐ橋渡しの役を担い、エンディングでは軽やかに曲を締めくくり、爽快感を残します。
ライブで演奏される機会は今や多くないものの、1990~91年の〈RHYTHM RED TMN TOUR〉での演奏が映像として残っています。ロックを標榜したこのライブで「クロコダイル・ラップ」も装いを新たにしました。たくましいスネアやギターの音が曲に力強さを与えます。なかでもロック的なアプローチを見せるのが、木根さんのハーモニカです。イントロと間奏で披露するハーモニカは勢いがあってアグレッシブ。特に間奏では葛城哲哉のギターとのアドリブによる掛け合いが見所で、そのパフォーマンスに魅せられます。