Tetsuya Komuro「Traffic Jam」:渋滞という現実から切り離され、潜り込むTKジャズ・ワールド

fujiokashinya
Oct 13, 2024

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アルバム『JAZZY TOKEN』は、小室哲哉が正面切ってジャズにアプローチした珍しい作品です。アルバムの開幕を飾る曲は「Traffic Jam」といい、ピアノとドラムとベースで軽快な音を積み上げ、キャッチーなテーマ・メロディの魅力を伝えます。交通渋滞という曲名とは裏腹に、リズミカルに響く音が僕らを快適な音の世界に導くジャズ・ソングです。

音の数が絞られているためか、メロディの良さをダイレクトに味わえます。冒頭からリフレインするピアノの音に引き込まれ、ずっと聴いていたいと何度思ったことか。キャッチーなメロディが聴き手を引きつけるのは、いつの時代も、どのようなジャンルでも変わりません。ジャズだろうがロックだろうが、はたまたEDMであっても、メロディが魅力的な曲は音楽ファンの心を揺さぶります。

インストゥルメンタルは曲名がイメージを左右することが多く、言葉の解釈次第で音から受けるイメージは別のものになり得ます。では曲名の「Traffic Jam」から、どのような場面を思い浮かべるのか。ぼんやりと想像を巡らせてみると、カーラジオから流れる交通渋滞のニュースを聞きながら、渋滞とは無縁の道をすいすいと運転する誰かが浮かびました。どこか別の場所で誰かを閉じ込めている車の群れと対比される、自由で孤高のドライブ。

またあるときは、交通渋滞に捕まった車内を想像しました。ピアノを軸とした音が描く流線型の響きは、なかなか進まない渋滞のなかで、ささくれ立った心を多少なりとも和らげてくれるかもしれません。渋滞という現実から切り離されて心地よいジャズ・ワールドにダイブする。交通渋滞が喚起するネガティブな感情は小さくなり、淀みなく流れる軽やかな音に包まれ、ハンドルを握る手から余計な力が抜けていきます。

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Written by fujiokashinya

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