Takashi Utsunomiya「見えない灼熱」:衝突して火花を散らし、熱く燃えるロック・アンサンブル
ウツこと宇都宮隆が1998年にリリースしたアルバム『fragile』は濃厚なロック・テイストに満ちた作品です。アルバムから最初にシングル・カットされた「見えない灼熱(こころ)」は、熱く乾いたロック・サウンドでまとめられており、最初から最後まで冷めることなく、むしろヒートアップする展開を見せます。
シングルを聴いたとき、前作『easy attraction』あるいはTKプロデュースで制作した「discovery」や「if you wish…」からの落差に驚き、そして想像しなかった音の塊に度肝を抜かれました。ウツソロやTM NETWORKの曲で感じたことのない種類のインパクトに圧倒されたことを覚えています。強烈なスネアの厚い音、唸りをあげるベースの太い音が響き、負けじとギターやピアノも自らの音を主張します。衝突する音は互いを打ち消すのではなく、美しい火花を散らし、その衝突自体をエンターテインメントとして提供します。
ロック・サウンドへの傾倒を印象付けるためか、シングルでは音とボーカルが並び、場所によっては音の方が前に出ているように感じられます。一方、アルバムに収録されたSamantha Mixではバックトラックの位置が下がり、ボーカルが前に出ます。他の曲とのバランスをとったのかもしれません。その調整は、音の主張が激しいシングル・ミックスの特異性を強調します。
〈TAKASHI UTSUNOMIYA TOUR 2021 U Mix〉のライブ映像が公開されています。音源のバックトラックを下敷きにした音に重なるのは、nishi-kenのキーボードとNAOTOのヴァイオリンです。ギターソロの代わりに響くヴァイオリンの音が、ギターとは異なる熱を伴い、曲を彩ります。青く発光する炎のように、クールに見えて熱い音を響かせます。