T.UTU「Butterfly」:音と言葉と指先が宙を舞って交わり描く軌跡

fujiokashinya
Sep 10, 2024

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T.UTUとは、1992年に宇都宮隆がソロ・デビューを果たしたときの名義です。TM NETWORKが潜伏したこの時期に、ウツはT.UTUとして二枚のアルバムを発表しました。最初にリリースした作品が『BUTTERFLY』であり、表題曲の「Butterfly」がアルバムを締めくくります。

ギター・ロック系のアレンジを中心に組み立てられたアルバムのなかで、「Butterfly」はカラーが異なります。打ち込みメインのサウンド、すべて英語で書かれた歌詞、テンポよく鋭く言葉を刻むラップ。また、ボーカルの比率が低いことも特徴で、そのぶんコーラスとラップが多く、インストゥルメンタルのパートが長めです。構成やアレンジは歌モノというよりエレクトロのアプローチを思わせます。

『BUTTERFLY』を発表して始まった全国ツアーでは、T.UTU with The Bandと称し、ウツを含めて総勢九人のバンドでステージを作り上げました。このとき、生のドラムとベースを得た「Butterfly」は新しい印象を生みます。生の音で刻むリズムがロックの濃度を上げていて、リズムの違いで曲の印象は大きく変わることを実感しました。

コーラスの三人がサビで披露した、蝶をモチーフにしたであろう振り付けも好きです。このライブでは、セットや照明での演出を抑えた一方で、コーラス隊が動いたりツイン・ギターでフロントを固めたりと、演者の存在が視覚的にステージを彩りました。ライブの開幕を飾った「Butterfly」でのコーラス隊の動きは、シンボリックなパフォーマンスといえます。

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