SQUARE ENIX MUSIC『SQUARE ENIX Airship Cruise Beats Vol. 3』：ゲームを媒介したダンス・ミュージックの拡張
Airship Cruise Beatsとは、SQUARE ENIXのゲーム音楽をEDMでリミックスする企画です。2022年に始まったシリーズで、2024年2月には第三弾のアルバム『SQUARE ENIX Airship Cruise Beats Vol. 3』がリリースされました。収録されたのは、いずれも有名な作品（FINAL FANTASY、クロノ・トリガー、NieR、ロマンシング サガ、聖剣伝説、ライブ・ア・ライブ）の曲です。
強烈なベースやキック、フックの効いたシンセサイザーの音。EDM loverの心を鷲掴みにするサウンドが次から次へと飛び出します。例えば、名曲揃いの『クロノ・トリガー』で僕の好きな曲のひとつが「ロボのテーマ」です。本作では、メロディの魅力を味わいつつ、分厚いソフト・シンセのループ・サウンドが堪能できます。
FFシリーズからは『FINAL FANTASY X』の「Blitz Off」が選ばれています。ここで聴けるのは原曲のグルーヴを活かしたトランス的なアプローチです。無表情な音が絡みつき、肉厚なキックが聴く人を支配します。また、『FINAL FANTASY XIII』の「閃光」はドラムンベースからダブステップに移り変わるアレンジ。ヘビーなリズムとノイジーなエレクトロニック・サウンドと胸を打つリリカルなメロディが凝縮されたリミックスです。
YouTubeには、本作を中心に構成した100分ほどのDJ MIXがアップロードされています。初めて聴く曲もあれば耳慣れたメロディもありますが、間に境界線はありません。身体を刺激する音、心躍る音。ハウス、トランス、ダブステップなどEDMへの大胆な改造が聴く人を呑み込み、エレクトロニック・サウンドの渦に巻き込みます。
Airship Cruise Beatsシリーズ以外の曲を組み込んだことも、このDJ MIXの注目すべき点です。目立つのは「ビッグブリッヂの死闘」でしょうか。有名なメロディがいくつものバージョンで堪能でき、エレクトロも三味線も渾然一体となって僕らを襲います。
何度も耳にした『FINAL FANTASY III』の「悠久の風」はエレクトロ版が聴けます。聴くと必ずフィールドの画面を思い浮かべる、記憶に刻まれた音楽です。それこそ風が吹き抜けるようにエレクトロニック・サウンドのなかを舞うメロディに、胸が熱くなりました。さらに、続編が発売されたばかりの『FINAL FANTASY VII REMAKE』の曲も存在感を放ちます。「闘う者達 REMAKE」から始まり「STAND UP — Reprise -」で締めるEDMとファンクの一群が最後に配置され、DJ MIXのエンディングを煌びやかに彩ります。
