Reol「No title」:題名を持たない絵画が鑑賞者の想像力を刺激する

fujiokashinya
Jul 1, 2020

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Reol「No title」は、インディーズ時代にコミケで発表された曲です。僕はこの曲を、アルバム『金字塔』がリリースされたとき(2020年1月)に、YouTube Space Tokyoから配信されたライブで初めて聴きました。歌や音が漂わせる独特の空気に惹かれ、配信が終わってすぐにApple Musicを検索しました。Reolの曲を集めたプレイリストに入れてよく聴いています。

YouTube Space Tokyoでのライブでは、ミュージック・ビデオが映る壁の前に座り、映像と同化しながら「No title」を歌っていた姿が記憶に残っています。体温低めの淡々としたボーカルが印象的です。モノローグのような歌い方ですが、言葉はすぐに消えるのではなく、波間を漂うように残り続けます。今すぐではなくても、いつかどこかで誰かに届くかもしれない言葉。

歌と同様に音にも淡々とした印象を抱きました。そのエレクトロニック・サウンドは、軽やかに、けれども静かに空気を震わせます。世の中の喧騒から距離をとり、冷めた目で物事を見つめているような静かさというべきでしょうか。自分の道を歩きながら、自分の心は支配されないように守りながら、自らの歩調と距離を保っている。孤独ではないけれど、一人。

歌詞は歌詞としてひとつの世界を築いていますが、それとは別に、音だけでも物語が生まれる曲なのではないかと思います。「No title」という曲名が示すように、聴き手がイメージできる世界の数は、きっと無限です。

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Written by fujiokashinya

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