quasimode『SOUL COOKIN’』[PART3]:Slow Motion, El Paso Twist, King Of Kings, Still In The Night, Give It Up Turn It Loose, Keep On Steppin’, Closing Time

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quasimodeのアルバム『SOUL COOKIN’』の後半は「Slow Motion」から始まります。土岐麻子をボーカルに迎えた、爽やかな雰囲気の曲です。軽快なイントロから音の世界に没入し、歌声が聞こえると温かみが広がります。歌声は少しずつ表情を変えます。彼女が書いた♪一人で潜ったプールの水色♪という表現が、過ぎ去った夏を巻き戻すようで、とても好きです。軽やかに刻むパーカッション、ハッピーな雰囲気を出すホーン、涼しげなストリングスが秋の風を感じさせます。開いていた本が風にあおられ、ページがめくれる。風が「先に進めよ」と背中を押すかのような。

ピアノが跳ねて、トランペットが笑い、サックスもおどけたようにステップを踏んでみせる。ベースが踊る、パーカッションが叫ぶ、ドラムが肩を竦める。「El Paso Twist」は底抜けの明るさに満ちた、表情豊かな曲です。短いスパンでバトンを渡すソロ演奏も、わずかな時間、わずかな音符の中に笑顔を凝縮した感じがします。笑顔があふれる曲。楽しそうに笑う人の周りに人は集まります。そのままパーティーが始まって、歌声が弾けて、手拍子が舞えば、多くの笑顔が咲き乱れる。

「King Of Kings」では奇妙なパレードを想像してみました。matzzの叩くティンバレスが合図となって進むパレード。ホーンやパーカッションが随所で盛り上げます。周囲でパレードに声をかける群衆は熱狂の渦に包まれます。しかし、誰を乗せているのか誰も分かっていないのではないか。そこに讃えるべき人がいると信じて、あるいは疑いすら持たずに、演奏し、声援を送っているのかもしれません。ハーメルンの笛吹き男のように音を鳴らして行進するパレード、それを追いかけて歩く人の群れ。

相手を呑み込もうとするストリングスの重く分厚い音。音が途切れると、バンドの演奏が顔を覗かせます。分厚い雲を切り裂く明るい音、鋭い音。呑み込まれそうになりながら、コンガが打ち鳴らされる。ストリングスが攻め、ピアノが反撃する。一進一退、せめぎ合う音と音にぞくぞくします。互いを支えるのがバンドだとは思いますが、「Still In The Night」では音をぶつけ合うような丁々発止こそが魅力を生み出しています。

ずしりと響くピアノとアコースティック・ベースの音から始まる「Give It Up Turn It Loose」のカバー。奥山みなこの歌声はクールで近寄りがたい空気をまとう一方で、甘さや色っぽさもあります。切なく響くフルートを含めた音から浮かぶイメージは、ヨーロッパのお洒落な街並みです。友情も愛情も惜しみなく表現し合う人々が行き交います。

「Keep On Steppin’」を聴いて、踊ること歌うことは絵を描くことに近いかもしれないと思いました。quasimodeの音がカンヴァスになって僕らは色を重ねる――思いのままに踊り、メロディを口ずさむ。開放的な音であり、爽やかなアレンジを施した曲です。よく晴れた屋外のステージで演奏しているのを聴いたら、きっと気持ちよい。

めくるめく展開を見せたアルバムが終わります。幕を下ろす役割を担う曲が「Closing Time」です。四人の演奏は緻密に編まれ、音の重なりが滑らかにゆるやかに移り変わり、聴く人の心をほぐします。ループするピアノの響きは、夢に落ちる寸前の心地よさを思わせます。何も考えなくていい夜。音が遠くに聞こえ、気づかぬうちに夜の奥に潜り込みます。

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fujiokashinya

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