OVA『ACCA13区監察課 Regards』:拡がる物語世界に潜り込み、人々の日常を垣間見る
オノ・ナツメの漫画『ACCA13区監察課』が完結したのが2016年。翌2017年にアニメシリーズが放送され、そのラストシーンから約一年後を描いた、新作OVA『ACCA13区監察課 Regards』が2020年に劇場公開されました。
ストーリーはOVAオリジナルですが、そこにサイドストーリー集『ACCA13区監察課 P.S.』のエピソードや本編のワンシーンが回想として盛り込まれました。本編の主要なキャラクターを中心に、今作オリジナルの新キャラクターが加わり、物語が進みます。
『ACCA13区監察課 Regards』はスピンオフというほどではなく、事件らしい事件もなく、単行本のおまけ漫画にありそうなエピソードを綴りました。「若手が組織の体質に不満を持つ」や「進路に悩む」といったトピックは、本編のような網目の細かさはないものの、この世界のキャラクターたちの日常的な顔を見ることができた点が良かったと思います。
高橋諒が作った音楽もテレビシリーズと同じものが使われました。ジャズやファンクの雰囲気を感じる、味わい深くも熱い音は、このアニメに欠かせない要素であり、映画館の大きなスピーカーで聴けたことを嬉しく思います。
そして、エンディングではONE III NOTES(高橋諒、Foggy-D、ぽん)の「Our Place」が流れました。この曲はテレビシリーズの最終回でも使われ、物語を締め括る役割を果たしました。ボーカルの終わりとともに曲がカット・アウトし、『ACCA13区監察課』の世界の余韻が漂うところがとても好きです。
オノ・ナツメは同じ舞台設定で『BADON』という漫画を連載しています。登場する地名や店名から『ACCA13区監察課』の空気を感じつつ、しかしそれとは異なる視点で描かれ、新しい意味をまとった物語が堪能できます。
『ACCA13区監察課』は形を変え、新たな形をとって生き続けています。『ACCA13区監察課 Regards』もまた、拡張する『ACCA13区監察課』の世界の一部です。パズルのピースを見つけ、欠けたところにはめ込むようにして楽しむことができました。