ORESAMA「耳もとでつかまえて -Dressup cover-」:レトロなロックの風味が新たな価値を連れてくる
2020年6月から始まったORESAMAの「Dressup cover」企画は、7曲目で一旦区切られたかと思いきや、10月の新曲「Gimmme!」のリリースを挟み、「耳もとでつかまえて -Dressup cover-」で再開されました。
「耳もとでつかまえて」は、シングル「Trip Trip Trip」に収録され、その後アルバム『Hi-Fi POPS』にも選ばれました。ドラムやベースの音が厚く、ボトムのしっかりしたミディアム・テンポの曲です。そこに重なるエレクトリック・ピアノの音が味わい深く響きます。ささやくように歌っていたかと思えば、感情を吐露するように歌う。歌声の変化に、気持ちの揺れや崩れそうな脆さを感じます。
「耳もとでつかまえて -Dressup cover-」を聴いたとき、その音からイメージしたのは1980年代のロックです。シンセサイザーなどの煌びやかな音を盛り込み、ロックが華やかになった時代の空気を感じます。Fairlight CMIやSynclavierが多用された頃…というべきでしょうか。オリジナルとは別の方向で、ダイナミックな音の展開を楽しめるDressup coverです。
ORESAMAの特徴である「80年代」が示しているのは、主にファンクやディスコ・ソングでした。こうしたロックの要素も感じられると、捉え方がぐんと広がります。僕は1980年代の音楽をリアルタイムで体験したわけではないので、リバイバルを楽しむ感覚でORESAMAを聴いています。時代をつなぐようなアプローチは、聴けば聴くほど、自分の音楽体験を豊かにしてくれます。