ORESAMA「綺麗なものばかり -Dressup cover-」:きらめくファンク・サウンドに包まれ、歌声の奥に潜む心の影を見る
ORESAMAによる「Dressup cover」企画の第2弾、「綺麗なものばかり -Dressup cover-」がYouTubeで配信されています。オリジナルは2016年からライブで演奏されており、ORESAMAとH△Gの曲をまとめた企画盤に収録されました。再デビュー後のオリジナル・アルバム『Hi-Fi POPS』で聴くこともできます。
「綺麗なものばかり -Dressup cover-」を聴いたとき、そのアレンジに明るい印象を受けました。真夏の太陽というよりは秋晴れのようなイメージが浮かびます。絡み合う音は、聴き手に届くとするりとほどけ、すっと心に届く。ファンクやエレクトロの持つ親しみやすさを前面に押し出したという感じでしょうか。聴き手との距離が近くて、共有する時間が心地好いアレンジです。
ボーカルのぽんのnoteには、「綺麗なものばかり」に関するテキストが残っています。この曲を2016年のイベントで歌ったとき、彼女は自身のコンプレックスや曲に込めた気持ちを書き記し、以下の文章で締め括りました。
明るくて、楽しくて、かわいい曲が好き。
それをうたうのも好き。
だけど、本当のわたしは多分正反対。
だからこそ、自分にないものをくれるポップミュージックが、わたしは大好き。
日常を忘れて、楽しい時間をみんなで一緒にすごせる時間が、とても幸せ。ぽん
note — 『綺麗なものばかり』のこと。
自らの中に抱える二面性、矛盾するものを吐露した文章です。彼女は2018年のインタビューでも「わたしは普段内気というか、人前に出ていくタイプではない」と語りましたが、ステージに立ってスポットライトを浴び、歌い、観客を沸かせる姿を見ているのでとても意外です。noteに綴った心の揺れ動きは、ずっと抱えてきて、おそらくは今も抱えているのだろうと思います。
だからこそ…というのも変ですが、それもまたORESAMAの音楽を構成する要素なのではないでしょうか。Dressup coverで艶めいて響くぽんの歌声を聴いていると、奥に潜んだ心の一部が仄見える気がします。