Naoto Kine「REMEMBER ME?」:明るく跳ねるメロディの隙間から、優しさと哀愁が顔を出す
1996年の秋、木根尚登の「REMEMBER ME?」が発表されました。小室さんの協力を得て制作し、晩秋にリリースしたアルバム『REMEMBER ME?』のリード・シングルです。明るい雰囲気を感じさせるメロディには優しさと哀愁が垣間見えます。木根さんらしい柔らかなポップスです。
イントロからリズミカルに響くアコースティック・ギターの音が心地よくて、自然と身を任せて曲に入り込むことができます。その心地よさを膨らませるのが、跳ねる感じのリズム・セクションやエレクトリック・ギターやピアノの響きです。バンドが奏でる音の良さを実感できます。そこに重なるオルガンの音も魅力的です。やや控えめながらも存在感を示し、切なげな音が僕らの心を満たします。
それまで木根さんのリード・ボーカルを聴くのがTM NETWORKのバラードだけだったからか、「REMEMBER ME?」のボーカルに、木根さんにしては強く、アグレッシブなものを感じます。その強さは、歌詞の内容と相俟って、どこか強がっている人の姿をイメージさせます。情けない姿を見せまいと必死になっている感じでしょうか。それもまた木根さんらしいというのは失礼な気もしますが、どうやっても滲む人間っぽさは木根さんの魅力です。
♪見上げれば神無月 切なさに青く揺れた♪という歌詞が好きです。視覚的な情景に心象が重なり、イメージが広がります。もちろん神無月という呼び方の月(moon)は存在しません。少し肌寒くもある涼し気な秋の夜、あれこれと思い悩むことがある。そんな気持ちの揺らぎを、空に浮かぶ月が何も言わずに見下ろしています。