LINKIN PARK「What I’ve Done」:ストレートに響く歌声と鋭く光るギターの音がバンドを新しい世界に導いた

fujiokashinya
Sep 14, 2021

--

LINKIN PARKにはバンドを代表する素晴らしい曲がいくつもあります。2007年に発表された「What I’ve Done」もそのひとつです。三枚目のアルバム『Minutes To Midnight』から最初にシングル・カットされました。

「What I’ve Done」におけるChester Benningtonの歌声はとてもクリアで、何物にもさえぎられることなく、まっすぐ響きます。歪ませている部分がほとんどなくて、ストレートに聴き手に届きます。また、歌詞の量は少なく、音を大胆に伸ばす箇所がいくつもあります。それが重厚な音と相俟って、重心の低い、タフな曲を作り上げました。曲名になっている “what I’ve done” というワードが何度も使われ、そのすべての場面で印象に強く残ります。

『Minutes To Midnight』の大きな特徴はラップの比率を下げたことであり、さらにサウンドの面でいうと、ギターの音が鋭利になっていることが挙げられます。以前の音は塊で迫ってきて、その厚みや濃さに圧倒されるものでしたが、そのイメージが変わった作品です。特に「What I’ve Done」では、Brad Delsonの弾くギターがメリハリの効いた音を生み出し、薪を割るように鋭く響きます。

これはLINKIN PARKなのか否か。『Minutes To Midnight』がリリースされたときのリスナーの反応は両極端だったと記憶しています。受け入れがたかった人々の言葉を補うと、「『自分の好きな』LINKIN PARKではない」ということになるのでしょうか。デビュー作『Hybrid Theory』や続く『Meteora』のテイストを期待したファンにとってこのアプローチは意外であり、人によっては期待外れだったのかもしれません。

では自分はどうだったのか。僕もまた旧作を踏襲した曲を期待しましたが、アルバムごとにアプローチが変わっても不自然ではないので、自分の予想や期待が裏切られたことはむしろ楽しかった。とはいえ、「これはこれで良し」という微妙な気持ちが偽らざる心であり、「もっとMike Shinodaのラップを聴きたい」と思ったのも本心です。

発表から十数年が過ぎた今、改めて「What I’ve Done」を聴くと、かつては見えなかったものが見えてきます。こうしてボーカルの素晴らしさや新しいギター・サウンドの魅力を言語化できるようになったのは、今だからこそといえます。当時は曲の魅力を充分に味わえていなかったと思うと悔やまれますが、時間が経ってもなお楽しめる余地があるのは素晴らしいことです。当時とは異なる感性で聴く楽しみもあります。音楽を聴くのに、あるいはそれで感動するのに、遅すぎることはありません。

--

--

fujiokashinya
fujiokashinya

Written by fujiokashinya

I am just a music/book lover. 音楽体験NOTESとブック・レポート My Twitter page: https://twitter.com/fujiokashinya

No responses yet