LINKIN PARK「The Catalyst」:連なり流れる言葉の群れが音を解放する
LINKIN PARKの「The Catalyst」は、アルバム『A Thousand Suns』から最初にシングル・カットされた曲であり、アルバムを代表する曲といえます。2010年の発表から10年が経とうとする今、期せずして『A Thousand Suns』を聴く機会が増え、アルバムの魅力とともに「The Catalyst」の良さを再認識しました。
「The Catalyst」の始まりは、夜が明け、ゆっくりと昇る太陽を想起させます。そんなイメージを切り裂くように飛び出すMr. Hahnのスクラッチ。薄めのサウンドに加わるPhoenixのベース。音が集まり、離れ、また集まって、次第にひとつの塊をつくっていく展開に心が熱くなります。
曲の前半では、バンドの音に引き立てられながら、全体をシンセサイザーの音が引っ張ります。エレクトロというべきかロックというべきか、その線引きは難しいものの、境界付近で両者を行き交うハイブリッドな音はとても魅力的です。
同じメロディで、最初はMike Shinodaが “God bless us…”、次にChester Benningtonが “God save us…” と歌います。文字どおり息吐く間もないほど言葉を連ねており、とてもスリリングです。それでいてメロディの良さが伝わってくるのは、ソングライティングの巧みさと歌声の素晴らしさゆえでしょうか。流れるように言葉を連ね、同じ言葉を繰り返すことで、聴き手の体感スピードは加速度的に上がります。“the sins of…” を4回繰り返す部分はリズミカルかつ言葉の運びが鋭くて、特に好きです。
後半に入って曲調が変わると、Chesterが “Lift me up”、“Let me go” と最初は地面に置くように穏やかに歌いますが、ある瞬間にスイッチが切り換わって、空に向かって投げつけるように全力で歌います。バンドの音もまた、聴き手を縛る鎖を断ち切るが如く一際大きく、そして壮大に響きます。このまま終わらないでほしいと願いながら、分厚い層をなす音に包まれていると、やがてそれは小さくなり、消えます。