LINKIN PARK『One More Light Live』:2017年という特別な一年が凝縮されたライブ・アルバム

fujiokashinya
Dec 29, 2017

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LINKIN PARKのライブ・アルバム『One More Light Live』がリリースされました。2017年のワールド・ツアーの口火を切ったヨーロッパ公演でのパフォーマンスが収録されています。アムステルダムでの録音が中心ですが、他にもベルリン、ロンドン、クラクフなどの様子が収められています。

We dedicate this live album to our brother Chester who poured his heart and soul into One More Light.
LINKIN PARK: One More Light Live

セット・リストの中心となっているのは新作『One More Light』の曲です。『One More Light』のサウンドやボーカルは、表題曲をはじめとして全体的に穏やかな雰囲気があります。『One More Light Live』に同封された解説を読んでみると、『One More Light』を録音するにあたり、Chester BenningtonとMike Shinodaは専門家によるボーカルの指導を初めて受けたとのことです。それだけ歌に乗せて届けたいものがあったということでしょうか。

『One More Light』の最後に収録された「Sharp Edges」も、このツアーで演奏されました。ライブではBrad Delsonが弾くアコースティック・ギターの音に支えられ、Chesterがギターを弾きながら歌っています。『One More Light Live』には、演奏の後に「ギターを弾きながら歌うのは大変だね」と笑いながら語るMCも収録されています。

Sharp Edges (One More Light Live)

『One More Light Live』には新作以外の曲も盛り込まれています。「In The End」、「New Divide」、Jay-Zの「Encore」を含んだ「Numb」などを聴いていると、ライブで味わえる心地好さやスリリングさを追体験できる瞬間が数多く訪れます。特に「What I’ve Done」や「Leave Out All The Rest」では味わい深いバンド・アンサンブルを聴けて、僕はとても好きですね。

また、初期の代表曲のひとつ「Crawling」は象徴的だった激しいサウンドやシャウトではなく、美しいバラードとして披露されました。Mikeが弾くピアノの音を背景に、Chesterが歌い上げます。アルバムを通して聴いていると、彼の歌声がもたらす静謐な響きと、ハードな曲が生み出す会場の熱気がコントラストを描いて目の前に広がります。

Crawling (One More Light Live)

『One More Light Live』のジャケットには、観客に向けて手を伸ばすChesterが写っています。その姿を目にしたとき、『One More Light』を象徴するアートワークのひとつ「それぞれの手首をつかんで円を描く6本の腕」を思い出しました。『One More Light』の裏に印刷されており、また『One More Light Live』のCDをケースから外すと目に飛び込んできます。

6人を結ぶ関係の強さは言うまでもないし、バンドとファンの関係も推して知るべしです。だからこそというべきか、ジャケットに写るChesterの姿は「ライブという時間と場所でバンドが観客とつながることの意味」を僕らに改めて考えさせてくれて、そして大事に思わせてくれます。音楽におけるシンプルな関係性をストレートに表わしている写真なのではないでしょうか。

多くのファンがそれぞれの思いを抱えて聴いていることと思います。感傷的になるのはやむを得ないのかもしれませんが、それを焼き尽くすような熱い演奏に気持ちが昂ぶるのもまた事実です。『One More Light Live』には、6人の音楽が刻み込まれているのと同時に、2017年という特別な一年が凝縮されているのです。

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fujiokashinya

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