LINKIN PARK Livestream FROM ZERO

fujiokashinya
Sep 8, 2024

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2024年8月の終わり、真っ黒なスクリーンにカウントダウンを刻む動画が公開されました。投下したのはLINKIN PARK。新曲発表やライブといった活動は2017年で止まっていました。新しい活動が始まるのかどうか、憶測だけが交錯するなか、僕らはカウントダウンを見守ります。数字が「00:00:00」に到達したとき、今度はカウントアップが始まりました。謎は深まり、カウントが何を意味するのか秘められたまま、やがて新しい動画が予告されます。刻まれた言葉は “be part of something”。そして予告された9月5日(日本時間は9月6日の朝)に始まったのは――新しいLINKIN PARKのライブです。

ぐるりと観客に囲まれたステージに登場したのはMike Shinoda、Mr. Hahn、Phoenix、新メンバーのEmily ArmstrongとColin Brittain、そしてBrad Delsonの代理であるAlex Federです。新しいボーカリストとドラマーを得たLINKIN PARKのライブが開幕します。最初に演奏する曲について、すべての観客や視聴者がそれぞれの期待や予測を抱いたことでしょう。しかし、イントロもVerseもChorusも僕らの記憶には存在しません。それは、EmilyとColinを迎えて制作した新曲「The Emptiness Machine」でした。事前のメッセージに使われた “be part of something” とは、この曲の一節です。

新しい曲で新しい章の始まりを宣言すると、次からはヒット・ソングを立て続けに披露しました。まずは「Somewhere I Belong」です。「Crawling」、「Lying From You」、「The Catalyst」と続き、バンドの大きなレガシーを今の形で表現します。Chester Benningtonが世を去り、Rob Bourdonはバンドから離れ、Brad Delsonは制作に参加するがステージには上がらない――半分ほどが違う形になった新章。ハレーションは承知のうえで始まったプロジェクトのはずで、ネガティブな衝撃を緩和するための準備にも少なくない時間を費やしたのではないでしょうか。なによりもバンドやスタッフの覚悟と自信に敬意を表したい。

美しくて強く、プレゼンスに満ちたEmilyの歌声。素晴らしいパフォーマンスに感銘を受けました。特筆すべきは、柔らかい歌メロがEmilyの歌声にフィットした「Waiting For The End」です。歌声とメロディが引き寄せ合ったと思えるほどに相性が良くて、胸を打ちました。途中で見せた感極まる姿も印象に残っています。また、「Numb」や「What I’ve Done」といった伸びやかな歌を軸とする曲でも、持ち味を発揮します。そしてバンドのシンボルであり、ライブに欠かせない「In The End」のパフォーマンスにも感動しました。美しさと激しさの二面性を持つ、バンドの代表曲を歌いこなします。

当然ながらすべての曲がChesterの歌声で僕らの記憶に刻まれています。しかし過去も現在も等価であることをバンドは証明しました。Emilyは決してChesterの代理ではありません。過去を演じる役者ではなく、現在のLINKIN PARKでフロントに立つボーカリストです。深い意味を込めたのか定かではありませんが、Mikeは観客に向けて語りました――今日、Chesterの役割を担うのは君たちだ、と。ファンも巻き込み、新しいスタイルを作り上げるのが今のLINKIN PARKといえるでしょうか。再起動し、過去を継承しながらも以前とは異なるフェーズに入ったバンドを応援します。

LINKIN PARKは、このメンバーで数都市を巡るツアーをすでに組んでいて、さらに11月にはアルバム『From Zero』をリリースします。結成当時のバンド名(Xero)にも引っかけた、ゼロから始まる自分たちを表現したタイトルです。ライブの直後から「The Emptiness Machine」の配信が始まり、すでにストリーミング・サービスではアルバム収録曲の曲名も公開されています。走り出したLINKIN PARKの勢いに置いていかれないよう、全力で新しい音楽を楽しみます。いつかまたバンドが日本のステージに立って、素晴らしいパフォーマンスを披露する姿を目にしたいものです。

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Written by fujiokashinya

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