Led Zeppelin「The Rain Song」:メランコリックな音を解放するMellotronがバラードを美しく彩る
重厚なブルース・ロック、心にしみるフォーキーな演奏、骨太のハード・ロック、軽快に刻むファンク。曲を聴けば聴くほど、Led Zeppelinは多様な音楽性を備えたバンドだということが実感できます。そうしたバンドの音楽カタログの幅をさらに広げたのがバラードの「The Rain Song」です。1973年に発表した五作目のアルバム『Houses Of The Holy』に収録されています。
「The Rain Song」のアレンジの大きな特徴はMellotronです。1960年代後半~1970年代前半のロック・ソングに使われた楽器であり、この時代を象徴する音のひとつといえます。Mellotronがテープに記録されたストリングスやチェロの音を解き放つと、アコースティック・ギターやエレクトリック・ギターとのコントラストが際立ちます。ときにギターの叙情性を引き立て、ときに自らのプレゼンスを前面に押し出す。物憂げながらも美しい音が独自の味わいと膨らみを曲に持たせます。
2023年にデモ音源がJimmy Pageによって公開されました。一晩で作成されたデモには「The Seasons」というタイトルがつけられており、曲の流れやアイディアをまとめた覚え書きのようなものだったそうな。この段階でMellotronとギターの美しい重なりを聴くことができます。最終的に「The Rain Song」として完成したバージョンではボーカルが入り、リズムも加わります。終盤のピアノやドラムがドラマチックな展開を演出し、デモの雰囲気を踏襲しつつも、芯の太い曲に仕上がりました。