Kygo「Dancing Feet [feat. DNCE]」:dance music loverの過去と現在と記憶と記録が交錯する
ノルウェー出身のDJ/producerであるKygoが、DNCEというバンドとともに「Dancing Feet」を発表しました。イントロで響くシンセサイザーのリフが心地よく、冒頭から「この曲はきっと気持ちいい」と思わせてくれます。dance music loverの心をくすぐるアレンジです。
シンセサイザーに加え、甘く響くベースやファンキーに踊るホーンなど他の音も魅力的です。「Dancing Feet」のサウンドからは、総じてディスコ・ミュージックを思わせるレトロな風味を感じます。そこに古いというネガティブな意味は含みません。今という時間を満たしてくれる素晴らしいサウンドです。
そこそこ長くポップ・ミュージックを聴いていると、時としてノスタルジックな、とりわけ1980年代に回帰するようなサウンドに出会います。ノスタルジーといっても、僕のように現役でディスコ・ミュージックを浴びていない世代にとっては、あくまでも擬似的です。記憶から生まれる懐かしさではなく、「当時の映像や漫画などの記録から想像したレトロさやノスタルジックさ」とでもいうべきでしょうか。
「Dancing Feet」のようなアレンジは、聴く人たちの過去と現在と記憶と記録を交錯させるアプローチです。当時を知らない人にとっては、ファッションのリバイバルのように、知らないからこそ惹かれる魅力となります。一方で、当時を体験した人たちの記憶の底から、若いころの気持ちを引っ張ってくるトリガーにもなることでしょう。そうした可能性を持つ点で、1980年代という時代は実に興味深いものを残してくれました。