Immigrant’s Bossa Band「Bonito」:音は颯爽と駆け抜け、歌声は斑模様を描く
音楽レーベルPlaywrightを知ったとき、Tres-menやfox capture planといったグループの次に聴いたのがImmigrant’s Bossa Bandです。ジャズ、ラテン・ミュージック、ブラジリアン・ミュージックなどが混ざった曲を演奏するバンドであり、存在を知った一週間後には当時の最新アルバムを購入しました。その後、YouTubeのライブ映像をきっかけにしてダウンロードしたのが、2011年に新録された「Bonito」です。
パーカッション、ピアノ、ギター、ベース、ドラムスから成るバンドの演奏が追い風のように背中を押します。石畳の街を颯爽と駆け抜けるイメージが浮かぶ、爽やかでアクティブな演奏です。音に乗るボーカルは、気だるげな、絡みつくような、でもどこか冷めたような、斑模様の雰囲気を醸します。低音が魅力的な歌声です。大人の渋さや色気があり、微妙な声色の変化でいくつもの表情を見せます。繰り返し聴くたびに、斑模様は複雑になって色は溶け合う。
IBBのメンバーが変化したのは2010年前後です。特にボーカルを女性が務め、ギタリストが加入したことで、以前とは異なる雰囲気の曲が生まれました。その違いを楽しめるのが「Bonito」の新録と原曲の聴き比べです。原曲のアレンジは、疾走するパーカッションの音のなかで、ドラマチックなピアノの音の移ろいが印象に残ります。また、スキャットを主体にしたボーカルはひとつの楽器のように響きます。バンドの音との境界線は曖昧になり、やがて音に溶け込む。