hitomi「Anytime smokin’ cigarette」:快適な音のスパイラルに包まれ、やがて歌声の魅力に沈む
2015年にリリースされたglobeのカバー・アルバム『#globe20th -SPECIAL COVER BEST-』に、hitomiの歌う「Anytime smokin’ cigarette」が収録されています。1990年代に小室さんがプロデュースを手掛けたアーティストのひとりであることは言わずもがなであり、同窓会のようにも見えますが、僕にとってはhitomiの歌声の良さを理解できた点で、ノスタルジーの範疇に留まらない価値のあるカバーです。
音の展開がとても好きです。心地よいアコースティック・ギターとパーカッションの音が曲を引っ張り、サビでは音が一段と厚くなって、さらに間奏ではギターが響いて熱くなります。穏やかながらも芯の太いサウンドに、hitomiの歌が重なります。彼女の歌声は比較的クールで、時として淡々と響き、けれども受け入れる懐の深さを見せます。
KEIKOの歌い方は波形が急激に尖るように振れ幅が大きいのが特徴です。オリジナルの「Anytime smokin’ cigarette」について、hitomiは「静けさから始まり、けだるいパートからいきなりハイトーンになる持ち込み方がすごい」と語りました(日本版『Rolling Stone』2015年9月号)。
対して、hitomiによる「Anytime smokin’ cigarette」は、歌声はゆるやかな曲線を描き、そして丁寧に言葉をつなぐ印象があります。hitomiの歌は、メロディの良さやアレンジの方向性がストレートに伝わってきます。この曲を初めて聴く人には、むしろhitomiのバージョンの方がよいのではないかとさえ思います。