Gacharic Spin「JUICY BEATS」:光に誘われ、明滅するエレクトロニック・ロック・スタイル
Gacharic Spinの「JUICY BEATS」は、バンドのキャリア初期に制作された曲です。インディーズ時代の曲をまとめたベスト盤『ガチャっとBEST〈2010–2014〉』で聴くことができます。僕は2016年にTOKYO DOME CITY HALLのライブで初めて聴き、そしてすぐに気に入りました。
シンセサイザーやリズムでダンス・ミュージック的なアプローチを見せる一方で、オルタナを思わせるロック・サウンドは熱くて厚く、そしてタフです。ロックに「エレクトロを混ぜた」というよりは、「エレクトロを叩きつけた」ように思えます。両者がぶつかり火花を散らし、互いに相手を喰らおうとする攻撃的な音は実にスリリングでエキサイティングです。
多彩な音のなかで舞うボーカルはボコーダーという仮面を被り、紡ぐメロディは表情をくるくると変えます。感情を削り取った無機質な機械的な声かと思えば、息がかかるくらいに近くで囁かれているようにも聞こえ、切なさの混じったため息を思わせる瞬間もある。いくつもの世界が切り換わり、記憶を上書きします。
ミュージック・ビデオの演出で印象に残るのはライティングです。点滅するLEDライトをつけたグローブをはめて四人が踊ります。光の点は色と生命を与えられ、音を飲み込むように舞う。また、演奏シーンでは強い光が四人を照らします。光の塊が四人を呑み込み、その輪郭を描く。光による表現が「JUICY BEATS」を彩り、曲の魅力を視覚的に増幅させています。