Fort Minor「Believe Me」:バンドと異なる色で新しい模様を描いたヒップホップの要塞
LINKIN PARKの存在を知ったとき、まず僕が聴いたのはFort Minorのアルバム『The Rising Tied』です。Mike ShinodaのプロジェクトであるFort Minorは、バンドのデビュー以後は控えめにしていたヒップホップを前面に押し出しています。アルバムを聴いて、最初に好きになった曲が「Believe Me」です。
「Believe Me」では、Styles Of BeyondとMikeによるラップとボーカルが交互に差し込まれます。特筆すべきは歌メロの美しさであり、まず僕が惹かれたのもその点です。そして聴くたびにMikeのラップを好きになりました。それまで僕が聴いたものとは異なり、Mikeのラップにはクールさやインテリジェントさがあると感じました。ラップといえば世の中を斜めに見てふざけたり荒々しく振る舞ったりするイメージを持っていたのですが、それが崩されました。ラップやヒップホップに対する印象を刷新するきっかけとなったのがこの曲です。
LINKIN PARKを聴く機会が再び増えた2020年、Fort Minorを改めて聴くと、いくつか新たな発見がありました。そのうちのひとつ、当時は意識しなかった「Believe Me」の要素がパーカッションです。Bobo(Eric Bobo)はBeastie Boysなどに所属していたパーカッショニストであり、間奏でティンバレスを叩いています。軽やかで乾いたティンバレスの音は、重厚なリズムのなかで異彩を放ち、曲を一際輝かせます。
パーカッションの魅力を知ったのはFort Minorを聴いていた頃から数年後のことです。改めて「Believe Me」を聴いてみると、パーカッションという観点から楽しむことができる。昔は気づけなかった魅力に出会えるのは、いろいろな音楽を聴いてきたからこそのギフトといえるでしょう。
当時行なわれたFort Minorの配信ライブにStyles Of BeyondとともにBoboが参加しており、その音源はApple Musicでも聴くことができます。「Believe Me」ではイントロから格好良い演奏を聴かせてくれます。ヒップホップのなかで屹立するティンバレスに魅せられ、この曲をもっと好きになりました。