Eir Aoi LIVE HOUSE TOUR 2019 ~星が降るユメ~

fujiokashinya
6 min readDec 4, 2019

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Eir Aoi

2019年11月、藍井エイルのツアー〈Eir Aoi LIVE HOUSE TOUR 2019 ~星が降るユメ~〉が開催されました。11月3日の仙台公演から始まり、1週間に2~3公演を行なって11月中に終わるという短距離走のようなツアーでした。会場をライブハウスに限定したためか、「歌とバンドの演奏を届ける」というシンプルな演出が貫かれ、さらにMCの内容もくだけていて、距離感の近いライブだったと思います。

フロアに足を踏み入れたとき、開演前に流れている曲の雰囲気がライブハウスとは思えず、違和感を覚えました。ピアノやストリングスの音が物憂げで、冷たい雨に降られているような陰鬱さが漂います。アップテンポの曲で観客の気持ちを高めるのではなく、むしろ興奮を抑えるかのような選曲だったのが意外です。そして時は満ちる。フロアが暗転し、ステージを青い光が包むと、アグレッシブな音が響き渡り、バンドのメンバーが姿を見せます。

ライブの始まりを告げるのは、8月にリリースされた「月を追う真夜中」です。イントロから勢いがあり、分厚いバンド・サウンドが観客のハートに火を点け、会場の熱気は一気にヒートアップしました。サビをはじめとしてリズムが心地好くて、その一方で歌メロは叙情的で胸を締めつける。それらの良さを全身で感じることができ、否応なくボルテージは上がります。

ライブの構成をおおまかにいうと、初期のアルバムに収録された曲を序盤に披露し、中盤から新曲や最近の曲、そして定番の曲を演奏します。シングルにだけ収録された曲は演奏される機会も少なく、セット・リストに入ると驚きます。僕は初めて「空蝉アルティメット」という、シングル「ラピスラズリ」に収録されている曲をライブで聴きましたが、ヘビーメタルというかパンクというか、ヘドバン必至のアグレッシブな感じが最近の曲とは雰囲気が少し違って新鮮でした。

「月を追う真夜中」のシングルに収録されている「voyage」も、ライブで映える曲だと思いました。meg rockが言葉をテーマに書いた詞は歌メロとの相性が良く、「どうか」を使った言葉遊びも交えつつ、音の間を軽やかに駆け抜けます。特にサビの ♪永遠に 永遠に♪ という部分がリズミカルで好きです。

作曲はTAMATE BOXです。音の間隔が伸びたり詰まったりして生まれる起伏が刺激的で、実際のテンポよりも体感速度のようなものは大きいのではないかと思います。TAMATE BOXは「星が降るユメ」も提供しており、アルバム『FRAGMENT』では「螺旋世界」の作詞曲にも加わっています。いずれも良いので、新しいコラボレーションを今後も聴いてみたい。

10月に配信が始まった「星が降るユメ」は、ツアーのタイトルにもなっているように、このライブの中心といえる曲です。叙情的でありながら分厚い音に支えられ、言葉が響きます。歌う前に音楽を続けてきた、その原動力のひとつには、これまで出会った人々、すなわちバンドのメンバーやスタッフ、そして観客がいるからだと語ります。

「ヒトリトヒトリ」というバラードも初めてライブで聴くことができました。先述の「voyage」とともに「月を追う真夜中」に収録された曲です。シングルで聴いて歌声の響きに胸を打たれたものですが、生のパフォーマンスを媒介すると、言葉に込められた気持ちが増幅して届く気がしました。切なさは、より切なく響き、歌の世界を彩ります。

〈Eir Aoi LIVE HOUSE TOUR 2019 ~星が降るユメ~〉をおおまかに二分すると、後半は「インサイド・デジタリィ」から始まります。シングル「星が降るユメ」に収録されていますが、ツアーの時点ではリリース前でした。エレクトロの要素を含んだ曲で、嵐のようなバンド・サウンドの中で響くシンセサイザーのフレーズが印象的でした。

そしてカラーの異なる曲が続けて演奏されます。特に「INNOCENCE」「AURORA」で僕が好きなのは、間奏で繰り広げられるバンドの演奏です。歌メロのポップさがまた、スリリングな音の展開を引き立てます。会場の空気は曲ごとに変わり、ときにゆっくりと、ときに加速しながら、ライブのエンディングに向けて突き進みます。

後半の盛り上がりポイントは「グローアップ」でしょう。アルバム『FRAGMENT』で録音された最近の曲ですが、これまでの曲とは雰囲気が異なり、遊び心に満ちています。思春期における親への反発を歌いながら、パンキッシュな音で会場を盛り上げます。

ライブの本編を締めくくるのは「シリウス」です。数々のライブで披露され、要所を締めてきました。一等星の輝きを放つ歌声が、ステージから観客席にストレートに届きます。詞を書いたのは、「voyage」と同じくmeg rock。ネガティブな言葉も前向きにカラーリングするリリック・スタイルは、開放的なバンド・サウンドにぴたりと合い、躍動感を生み出しています。星の名前を冠したこの曲で、〈Eir Aoi LIVE HOUSE TOUR 2019 ~星が降るユメ~〉の幕が下ります。

アンコールで再びステージが明るくなると、「アヴァロン・ブルー」が披露されました(東京公演の1日目は「ツナガルオモイ」)。そして「IGNITE」がセット・リストの最後を飾ります。本人が語った「藍井エイルのライブはスポーツ」という言葉を体現するように、最後ながら「IGNITE」はライブの始まりを思わせる盛り上がりを見せました。

藍井エイルのライブをフロアで観たのは、このツアーが初めてです。これまでは2~3階席でしたが、今回はライブハウスということもあり、歌声もバンドの音も、よりダイレクトに届きました。発火点を超えていると思えるほどの熱気の中で、素晴らしいパフォーマンスを体験できました。

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