Drive David Guetta/Tom Staar Remix:オリジナルの印象を切り離し、新たな価値を生み出すEDMリミックス
Black CoffeeとDavid Guettaが制作した「Drive [feat. Delilah Montagu]」のRemixesが配信されています。その中で僕が注目したのがDavid Guetta自身によるリミックス、そしてTom Staarが手掛けたリミックスです。
オリジナルの「Drive」はアンビエント・ミュージックを思わせる、淡々と音が紡がれるアレンジでした。そのためか、両者のリミックスはオリジナルから印象が大きく変わっています。ひとくちにエレクトロニック・サウンドといってもバリエーションがあり、実に多彩ですが、David GuettaとTom Staarの音は攻撃的で塊となって身体に響きます。
David Guetta Remixの音から浮かんだのは、マグマが噴き出るかのようなイメージ。熱くたぎる音は聴き手のハートに火を点け、それどころか燃やし尽してしまうのではないかと思うほどに、アグレッシブな音の連鎖をぶつけてきます。♪I will drive all night♪ というフレーズとともにエレクトロニック・サウンドが熱を持ちます。熱く熱く、どこまでも熱く。
Tom Staar Remixで聴けるのは、強い風に背中を押されて疾走するような、スピード感とタフさに満ちた音です。硬くて太いベースやキックが疾走感を増幅させる。David Guettaのようにベースとキックを強調しながらも、異なる角度から曲を変化させています。重くて厚みがありながらも疾走感に満ちている…といった、水と油のように離れた要素をうまく混ぜ合わせるのがTom Staarの音ですね。その独自性はこのリミックスでも発揮されています。
他にも興味深いリミックスが収録されているので、オリジナルを含めて、他のバージョンをストリーミングで聴いてみることを勧めます。例えばRed Axes Remixは、ゆったりとしたテンポの中で、違う世界に引きずり込まれるようなヘビーな音が響きます。また、Pablo Fierro RemixやMander Remixはオリジナルの雰囲気を残しながらも、現実感を失わせる心地好い音が重ねられ、ループして絡みつきます。
エレクトロニック・ミュージックの魅力は、オリジナルを起点にして広がるリミックスのアプローチの幅です。どの音が自分に合うか試してみたい、自分の知らなかった音に出会いたい、好きな音を浴びるようにもっと聴きたい。音に対する聴き手の欲望に応える音楽的世界がそこには広がっています。