BTS「Dynamite」:風が吹き抜けるポップ・ソング、魂を吹き込むファンク・サウンド
爽やかなファンク・サウンドが身体を疼かせ、心を弾ませます。BTS(방탄소년단)の新曲「Dynamite」は、淀んだ空気を吹き飛ばす、風通しのよいポップ・ソングです。ミュージック・ビデオでメンバーが見せる表情やパフォーマンスも、曲の明るさを体現しています。
ファンキーな音を背にして、ポップで鮮やかなメロディを歌いこなす7人。舞うように響く7つの歌声のなか、最も印象に残るのが “Dy-na-na-na, na-na…” の部分です。キャッチーで記憶に残るのは、BTSの優れたボーカル表現に加え、メロディや言葉のはめ方が素晴らしいことの証でしょう。
シンプルに組み立てられた「Dynamite」のサウンドは、重ねて厚みを出すというよりは、それぞれの音が際立ったつくりになっています。ファンクを感じさせるギターやホーンの音、さらに重なるキーボードの音が特に好きです。ノスタルジックともいえる音に2020年の感性を注ぎ込むと、昔っぽくて今っぽいという不思議な質感を漂わせるサウンドになります。
オリジナルと同時にインストゥルメンタルが配信されました。BTSの美声をさらに楽しむために、音を堪能することはとても重要です。インストでアレンジの良さを味わってから改めて歌を聴くと、曲の立体感や奥行きを感じられます。曲の別の側面が見られるため、歌モノのインストは貴重です。
そして、数日後に2種類のリミックスがドロップされました。Acoustic Remixのメインとなる音の種類(ギター、キーボード、ベース、ホーンなど)はオリジナルと大きく変わりませんが、キーボードやギターが聴き手の近くで鳴っている感じがあります。一方、EDM RemixではBPMを上げてエレクトロニック・サウンドを主体にしています。イメージとしてはZeddに近い感じでしょうか。オリジナルとは音の印象が大きく変わっており、その変化が楽しいリミックスです。
「Dynamite」のソングライティングを担当したのは、David StewartとJessica Agombarです。David StewartはEurythmics(ユーリズミックス)のギタリストであり、Eurythmicsといえば1980年代を語る際によく名前が挙がるグループです。
「Dynamite」では、1980年代のディスコ・ソングやポップ・ミュージックの良いところが抽出され、今の感性で新しい価値を生み出しています。BTSの曲は、複数のソングライター、ジャンル、時代の雰囲気などが混ざり合います。カラフルな要素がBTSという一点で交わる。その瞬間に立ち会えることは幸運であり、新しい曲を聴くことにとどまらない強烈な体験なのではないかと思います。