AVICII「Dear Boy」:シンセサイザーが生み出す哀愁を彩るのは美しく輝く歌声

fujiokashinya
Jan 4, 2024

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AVICIIのデビュー・アルバム『True』に収録された曲はどれも魅力的で、明るく開放的な曲も重苦しくメランコリックな曲もそれぞれの良さと味わいを提供します。そのなかで「Dear Boy」が届けてくれたのは、深みのある哀愁です。重厚なリズムやエレクトロニック・サウンドが生み出す哀愁を、優しく、しかし凛とした歌声が彩り、美しい哀愁に仕上げます。

歪むベースと高密度のキックを埋め込んだリズム、胸を打つメロディを描くシンセサイザー。肉厚なリズムとソフト・シンセで奏でるキャッチーなフレーズの組み合わせはEDMの大きな魅力であり、それは「Dear Boy」でも堪能できます。EDM時代の幕開けによって、ギターやピアノだけではなく、リズムやシンセサイザーにも「泣き」の役割が広がったといえるかもしれません。

ボーカルで参加するのは(Karen Marie Ørsted)というデンマーク出身のシンガー・ソングライターです。最初、歌は体温が低く、無表情で、そして無機質に感じられます。しかし徐々に熱を帯び、感情の火が灯され、血の通った美しさを見せる。熱いシンセサイザー・サウンドと手を取り合い、美しく輝く歌声が聴き手を呑み込みます。

AVICII自身が『True』の曲を再構成したアルバム『True: Avicii By Avicii』に「Dear Boy -Avicii By Avicii-」が収録されています。原曲とは印象が変わるアレンジです。少しテンポを下げて、シンセサイザーのリフを新たに加えています。ずっとループしてもらいたいと思う中毒性の高いフレーズです。しかし、このアプローチはここで終わりません。2015年、このリフを「Sunset Jesus」という曲で再び耳にすることになりました。異なる曲の一部として新しい生命を得る、不思議な音の旅を体験できます。

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Written by fujiokashinya

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