fujiokashinya

EDMデュオのOdeszaが発表した「The Last Goodbye」が素晴らしくて、エレクトロニック・ミュージックを集めたプレイリストに入れて何度も聴いています。Mac Book AirのCMで知った曲です。パワフルな歌声と、それに続くノイジーなエレクトロニック・サウンドが印象に強く残り、すぐに検索して見つけたのが「The Last Goodbye」でした。

多彩な音が絡み合い、音が音を引き立てる仕掛けを楽しめるエレクトロニック・ミュージックです。第一印象で僕を虜にしたノイジーな音もさることながら、曲を支えるリズムにも惹かれます。特にベースが前面に出て曲を支配する部分(2:45~)がとても好きです。音の沼に引きずり込まれ、その心地よさから抜け出せません。

「The Last Goodbye」では、Bettye LaVetteというソウル・シンガーのボーカルが使われています。曲は60年近く前に発表された「Let Me Down Easy」です。過去に吹き込まれたタフな歌声を素材としてエレクトロに組み込むアプローチは、経年を感じさせない力強さと、過去の曲ならではの存在感が矛盾せず共存します。

同じアプローチとして挙げられる曲は、例えばEtta Jamesの「Something’s Got A Hold On Me」をサンプリングしたAVICIIの代表曲「Levels」でしょうか。異なるフィールドにある要素が結びつき、新しい価値を生み出します。素晴らしい邂逅です。

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記憶に新しく刻まれるピアノの音。アナログ盤で限定販売されていた小室哲哉のアルバム『JAZZY TOKEN』がストリーミングやダウンロードで聴けるようになりました。ピアノを中心にベースとドラムで組み立て、曲によってホーンやギターを入れたサウンドが聴ける一枚です。エレクトロニック・ミュージックとは異なる鍵盤の響きに魅了されます。 特に強く印象に残った曲は、アルバムの開幕を告げる「Traffic Jam」です。2021年11月のコンサート〈Tetsuya Komuro Rebooting 1.0〉のオープニングで初めて聴き、リフレインするピアノの音に引き込まれました。キャッチーなメロディを生み出すこの音を、ずっと聴いていたい。音の数が絞られていると、メロディの良さをダイレクトに味わえるものです。 アルバムには魅力的な曲が他にも収められています。「IBIZA Morning」はEDMの聖地であるIbizaを曲名に冠しながらも、対極にあるような音で構成されています。Ibizaといえども、爆音で盛り上がった夜が終われば穏やかな朝を迎えるのでしょう。「RIVE GAUCHE」はベースの上で絡み合うエレクトリック・ピアノとアコースティック・ピアノの音が印象的で、さらに途中から加わるシンセサイザーの音が鍵盤の共演を彩ります。

Tetsuya Komuro『JAZZY TOKEN』:ピアノの音が刻む印、メロディが残す印象
Tetsuya Komuro『JAZZY TOKEN』:ピアノの音が刻む印、メロディが残す印象
JAZZY TOKEN

記憶に新しく刻まれるピアノの音。アナログ盤で限定販売されていた小室哲哉のアルバム『JAZZY TOKEN』がストリーミングやダウンロードで聴けるようになりました。ピアノを中心にベースとドラムで組み立て、曲によってホーンやギターを入れたサウンドが聴ける一枚です。エレクトロニック・ミュージックとは異なる鍵盤の響きに魅了されます。

特に強く印象に残った曲は、アルバムの開幕を告げる「Traffic Jam」です。2021年11月のコンサート〈Tetsuya Komuro Rebooting 1.0〉のオープニングで初めて聴き、リフレインするピアノの音に引き込まれました。キャッチーなメロディを生み出すこの音を、ずっと聴いていたい。音の数が絞られていると、メロディの良さをダイレクトに味わえるものです。

アルバムには魅力的な曲が他にも収められています。「IBIZA Morning」はEDMの聖地であるIbizaを曲名に冠しながらも、対極にあるような音で構成されています。Ibizaといえども、爆音で盛り上がった夜が終われば穏やかな朝を迎えるのでしょう。「RIVE GAUCHE」はベースの上で絡み合うエレクトリック・ピアノとアコースティック・ピアノの音が印象的で、さらに途中から加わるシンセサイザーの音が鍵盤の共演を彩ります。

『JAZZY TOKEN』を聴きながら不思議に思ったのは、記憶の一角で鳴っていた音が呼び起こされることです。TM NETWORKの「A DAY IN THE GIRL’S LIFE」を思い出したかと思えば、ソロの「South Beach Walk」を感じる瞬間もありました。メロディの端々やピアノの響きに、これまで小室さんが書いた曲の影が見えます。ふとした瞬間に重なるメロディの記憶は、長く聴き続けているTK music loverにとって特別なギフトに思えます。

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エネルギッシュなMike Shinodaのラップと分厚いヘビー・ロックのサウンド。LINKIN PARK「Points Of Authority」は、2000年にリリースされたデビュー・アルバム『Hybrid Theory』の収録曲です。好きなLINKIN PARKの曲をいくつか選ぶとき、確実に僕はこの曲を候補に挙げます。

「Points Of Authority」の核となっているのは、“Forfeit the game...” から始まるMikeのラップです。イントロと間奏で登場するこのラップが強烈なプレゼンスを示し、聴き手の心を支配します。また、肉厚なギター・サウンドを聴いていると身体が震え、頭を振るなり声を上げるなり、何かしら身体で表現したくなります。聴き手をアジテートするラップとサウンドです。

デビュー作の曲を新たな形で再構成したアルバム『Reanimation』には、「PTS.OF.ATHRTY」というタイトルで収録されています。オリジナルとは異なる角度で表現された分厚いサウンドと、全体を貫き、不穏な空気を感させる音が印象に残るバージョンです。

2000年代後半以降のライブでは少し変化が見られます。Mikeのソロ・プロジェクトであるFort Minorの「In Stereo」のリリック “Welcome one and all to the show…” 以降が、「Points Of Authority」の冒頭に組み込まれています。そこからシームレスに “Forfeit the game…” につながり、イントロが始まる展開は素晴らしい。さまざまなライブ・テイクを集めた「Live Around The World」シリーズのテイクで聴くことができます。

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藍井エイルといえばロック。そう断言することもできるくらいロック・サウンドで固められていますが、ときには変化球を見せます。珍しくジャズやファンクに寄せるアプローチを見せたのが、「Raspberry Moon」という曲です。2015年にリリースしたシングル「ツナガルオモイ」に収録されています。

ベースの太い音を軸にしたリズムに、ノリのいいホーンやピアノの音が軽快に絡みます。ホーンは随所で前に出てきて、ボーカルと入れ替わりにサウンドを引っ張ります。ギターはロックのたくましさとファンクの色気を同時に漂わせ、ひとつの曲を織り上げます。

サウンドに導かれたのか、エイルの歌声にも艶っぽさが見られます。こういった歌い方もできることに驚き、「藍井エイルはアニソン」というイメージを抱いていた頃には想像もしなかった多面性を感じました。多面性というものは、離れたところから眺めていると見えづらいのですが、ぐっと近づくと見えてくるものです。

配信ライブ〈Eir Aoi LIVE TOUR 2020 “I will…” ~have hope~〉で、エイルは黒いハットやケープコートをまとい、「Raspberry Moon」を披露しました。黒い衣装から生み出された歌声は曲線的で蠱惑的に響き、夜空に浮かぶ赤く熟れた月を思わせます。艶っぽいファンクと荒々しいロックがせめぎ合う音とともに、他の曲にはない魅力を放っていました。

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2022年の頭に、1970~80年代のロックを集めたプレイリストを作りました。もともと好きだったプログレやLed Zeppelinを選んでいると、ふと1980年代のYesに興味が湧き、その流れで聴いてみたくなったバンドがThe Policeです。代表作『Synchronicity』を聴き、ふたつある表題曲のうち、「Synchronicity I」がとても良くて、躊躇せずプレイリストに組み入れました。リアルタイムで聴けた世代ではないこともありThe Policeを聴く機会はなかったのですが、ついに自分にとっての旬、自分のなかで聴くべきタイミングが訪れます。

「Synchronicity I」の魅力は、ドラム、ベース、ギター、キーボード、そしてボーカルといった、すべてのパートがひとつになって生み出す疾走感です。あえて緩急をつけずに速度を維持する演奏が心地よく、身体を刺激します。アトランタでのライブ音源を聴くと、ライブの熱気も相まって、スタジオ録音よりもテンポアップしていると思えます。最後にStingが観客にジャンプするよう煽るところはライブらしくて最高です。

バンドの名前が記憶に残る出来事があったのは2012年です。小室さんが『Keyboard Magazine』(2012 SUMMER №377)で、TM NETWORKのシングル「I am」のアレンジで意識したのは『Synchronicity』のスピード感だと述べました。アルバム全体の印象なのか、個別の曲なのかは分かりませんが、アルバムで最もスピード感のある曲といえば「Synchronicity I」でしょう。淀みなく駆け抜ける感じは「I am」に通じるものがあります。

それから10年。僕のなかで「Synchronicity I」と「I am」がリンクしており、片方を聴くともう片方も思い浮かべるというシンク状態によくなります。変な聴き方かもしれませんが、そのミッシング・リンクが曲に奥行きを与えていると思っています。その後、Swedish House MafiaとStingのコラボレーションにも出会いました。曲やアーティストがコネクトしていくのは、ストリーミング・サービスが充実した時代の音楽のおもしろさです。音楽はネットワークを形成し、新旧が交錯し、「自分にとって旬」なときに新しい音楽体験を与えてくれます。

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1984年にキャリアをスタートさせたTM NETWORKが初めて発表したアルバムのタイトルは『RAINBOW RAINBOW』です。表題曲の「RAINBOW RAINBOW ~陽気なアインシュタインと80年代モナリザの一夜~」は、キラキラ輝くポップなイメージが浮かぶ音を軸にしながら、哀愁を漂わせる音も織り込んでいます。シンセサイザー・サウンドで独自の色を出そうと模索していたころの姿が映し出された曲なのではないでしょうか。

デビュー盤の表題曲ということもあり、特に1980年代のコンサートでは演奏される機会が多く、いくつかのライブ音源や映像で当時の雰囲気を知ることができます。コンサートでは、スタジオ・レコーディングで主にシンセサイザーの切なげな音が埋めていた間奏が、ギタリストやベーシストの見せ場となりました。例えば、1985年の〈DRAGON THE FESTIVAL TOUR featuring TM NETWORK〉では松本孝弘西村麻聡、1994年の〈TMN 4001 DAYS GROOVE〉では北島健二による素晴らしいソロ演奏が聴けます。

1989年にはニューヨークでリミックスされた音源が『DRESS』に収録されました。制作したのは、Madonnaをはじめとする著名なアーティストのプロデュースやリミックスを手掛けたJellybeanです。『DRESS』で聴けるリミックスはオリジナルのイメージを残しつつも、ビートが強調され、クリアなエレクトロニック・サウンドが明るさと同時にメランコリックな空気を出しています。そして間奏の音からは、冷えた金属に触れたときのような無機質な冷たさが感じられます。

その後しばらく潜伏していた「RAINBOW RAINBOW」が新しいスタイルで生まれ変わったのは2014年。初期の曲を中心にリメイクしたアルバム『DRESS2』で「RAINBOW RAINBOW 2014」が聴けます。このアルバムの特徴である「EDMに傾倒したTM NETWORK」の一角を占める曲です。リリース直後のツアー〈TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end〉で披露されました。

「RAINBOW RAINBOW 2014」のポイントは、イントロのリフがそのままAメロを突き抜けていくところです。オリジナルからあるフレーズを少し変えてリフレインさせ、テンポアップして使っています。このリフが生み出す快感は格別であり、中毒症状すら引き起こします。間奏やエンディングでも顔を出すため、一度消えてもまた戻ってきて、そのたびに気持ちが盛り上がります。魔法のように聴き手を魅了するエレクトロニック・サウンドに身を委ねてみましょう。

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Zedd「Stay The Night」はヒット作『Clarity』のリリース後に発表されました。歌を吹き込んでいるのはParamoreのボーカリストであるHayley Williamsです。Hayley Williamsのタフで美しい歌声を大いに活かしながら、Zeddらしい強力かつポップなエレクトロニック・サウンドで聴き手を魅了します。

Stay The Night [feat. Hayley Williams of Paramore]

「Stay The Night」のオリジナルが公開された後、TiëstoやNicky RomeroなどのDJ/producerによるリミックスが発表されました。さらに、Zedd本人が関わったZedd and Kevin Drew Remixも素晴らしい仕上がりです。聴き手の気持ちを盛り上げる力強さとスピード感が、ぎゅっと閉じ込められています。

Stay The Night [feat. Hayley Williams of Paramore] -Zedd and Kevin Drew Remix-

僕は2013年にZeddとParamoreを別々のルートで知りました。それぞれの曲を聴く機会が増えたときに出会ったのが、この素晴らしいコラボレーションです。交わるとは想像しなかったふたつの線が交差すると、自分に与えられたギフトのように思えて、とても嬉しくなります。驚いて、感動して、そして今もこうして聴いては感動がよみがえります。

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TM NETWORK How Do You Crash It?

2021年から始まったTM NETWORKの新プロジェクトは、最初のプログラムである「How Do You Crash It?」シリーズをまとめると、次のプログラムを予告しました。その起動が迫るなか、〈How Do You Crash It? three〉で披露された曲の映像が公開されました。ライブ定番曲のひとつである「SELF CONTROL」です。

SELF CONTROL (How Do You Crash It?)

「SELF CONTROL」は1987年にシングルとして発表され、ライブでもよく演奏されてきました。イントロのリフだけで一曲を作った、とは小室さんの弁です(『キーボード・ランド』1987年3月号)。曲の頭から響くシンセサイザーのリフは、そのままAメロを駆け抜け、Bメロで一度消えますが、またサビで登場します。疾走感や爽快感があるのは、このリフが軸になっているからです。

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2022年6月、BTS방탄소년단)のコンピレーション・アルバム『Proof』がリリースされました。デビュー曲をはじめとして、グループの軌跡を刻んだベスト盤です。「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」という新曲も収録されました。心地よいミディアム・テンポで刻むシンプルな音のなか、穏やかに言葉を連ねます。

歌詞はかなり内省的で、「Dynamite」や「Butter」との落差に驚きました。遠くまできた自分たちの歩みを振り返っていて、ときにグループへの賛辞に戸惑うような表現が含まれています。もちろん胸の内を明かしているとは限りませんが、ワールドワイドで人気を博すグループの姿を思えば、少なくとも本音の一部が刻まれたと考えられます。

Music video by BTS performing Yet To Come

ただ、そうだとしても、決して後ろ向きな曲ではありません。曲名に冠した “Yet To Come” という言葉は、これで終わるわけではなく、むしろ何も成し遂げていないと語ります。これから新しいフィールドに向かう自分たちの今の姿を刻んでおこうとしたのでしょうか。

……と、ここまで書いたところで、BTSが活動の一時休止を発表したことを知りました。そのアナウンスを踏まえて「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」を聴くと、また異なる趣きを感じます。七人が向かう新しいフィールドとは、個々の活動であり、また再び集まったときに見せるであろう新しいBTSでもある。そんな意味を込めた “Yet To Come” なのかもしれません。

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SigalaTalia Marの連名で発表された新曲「Stay The Night」は、Sigalaらしい明るさと軽やかさが詰め込まれたエレクトロニック・ミュージックです。Talia MarはUK出身のシンガーであり、ストリーマーとしても人気を博しています。天井知らずの明るい歌声は、Sigalaのポップなサウンドとの相性がよく、楽しい気分にさせてくれます。

「Stay The Night」を聴いて真っ先に浮かんだイメージは、夏。よく響くTalia Marのボーカルで始まり、きらびやかなエレクトロニック・サウンドが束になって押し寄せるさまは、他のどの季節にも当てはまりません。夏の到来を待ちきれない気持ちが弾ける。そんな期待と衝動に満ちた曲ではないでしょうか。

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I am just a music/book lover. 音楽体験メモとブック・レポート My Twitter page: @fujiokashinya